手術室において乾燥耐性は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の高伝播性・耐性・感染症発生と関連する
Desiccation tolerance is associated with Staphylococcus aureus hypertransmissibility, resistance and infection development in the operating room
R.W. Loftus* , F. Dexter, A.D.M. Robinson, A.R. Horswill
* University of Iowa, USA
Journal of Hospital Infection (2018) 100, 299-308
背景
乾燥耐性は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の生存と伝播リスクを高める。黄色ブドウ球菌の術中伝播を引き起こす因子をより理解することは、術中感染制御の革新的な改善につながる可能性がある。
目的
乾燥耐性が黄色ブドウ球菌の術中伝播と関連するかどうかを明らかにすることと、術中の感染制御を図る改善策の策定を推進するために、手術室において乾燥耐性を示す分離株の典型的な伝播動態を分析すること。
方法
274 の手術室環境の麻酔作業領域のリザーバから黄色ブドウ球菌分離株(173 株)を収集した。乾燥耐性を評価し、シークエンス型(ST)およびクローン伝播と関連する可能性を評価した。細胞の全ゲノム解析とパルスフィールド・ゲル電気泳動解析により、乾燥耐性を示す分離株を感染症の原因菌と比較した。
結果
黄色ブドウ球菌の ST5 型分離株は、術中のその他すべての ST 型よりも乾燥耐性が高かった(ST5 型:34 株、2 日目のコロニー形成単位[cfu]による生存率中央値 0.027%±0.029%、その他の ST 型:139 株、2 日目の cfu による生存率中央値 0.0091%±1.41%、補正 P = 0.0001)。ST5 型はクローン伝播のリスク増加と関連した(相対リスク 1.82、95%信頼区間 1.23 ~ 2.71、P = 0.003)。細胞の全ゲノム解析により、ST5 型の伝播は術後感染症と関連していた。
結論
乾燥耐性の増大は黄色ブドウ球菌の ST5 型分離株の術中伝播と関連しており、この株は術後感染症と関連づけられる。さらなる研究によって、乾燥耐性を示す術中の ST5 型株の低減が医療関連感染症の発生率に影響しうるかどうかを検討する必要がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
黄色ブドウ球菌の ST5 型分離株の乾燥耐性と術後感染症の関連を調べた論文である。本論文では、この株を想定した環境消毒とともに、手指衛生と患者の除菌を提案しており、リーズナブルだと思われた。
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