内視鏡汚染の検出におけるアデノシン三リン酸測定の妥当性★★
The validity of adenosine triphosphate measurement in detecting endoscope contamination
C.E. McCafferty*, D. Abi-Hanna, M.J. Aghajani, G.T. Micali, I. Lockart, K. Vickery, I.B. Gosbell, S.O. Jensen
*Ingham Institute for Applied Medical Research, Australia
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e142-e145
背景
内視鏡検査は、消化管疾患の診断および管理にとって極めて重要であるが、感染症伝播のリスクがある。オーストラリアでは、患者の感染症予防のため、内視鏡に対する微生物学的検査を月 1 回から3 か月に 1 回行う。内視鏡の使用頻度はこの検査頻度より高いため、このサーベイランス法では感染症伝播が発生する前に汚染を検出できない可能性がある。
目的
高レベル消毒前の内視鏡汚染を検出する上での、標準的な微生物学的培養と並行してのアデノシン三リン酸(ATP)測定の使用について評価すること。これにより得られた結果を用いて、ATP およびコロニー数(cfu/mL)のレベルを下げるうえでの用手洗浄の有効性を確認することも目的とした。
方法
Liverpool Hospital の内視鏡部門において、臨床用途の胃内視鏡 17 本および大腸内視鏡 24 本から、高レベル消毒を行う前に洗浄の 3 段階においてサンプル採取を行った。次いで、これらのサンプルのコロニー数および ATP 測定値を計測した。
結果
大腸内視鏡から採取したサンプルにおける cfu/mL と相対発光量(RLU)の間の相関は 0.497(95%信頼区間[CI]0.28 ~ 0.66)であった(P < 0.0001)。胃内視鏡から採取したサンプルにおける cfu/mL と RLU の間の相関は 0.377(95%CI 0.08 ~ 0.61)であった(P = 0.0138)。RLUとcfu/mL の測定値には、予備洗浄と用手洗浄の後で有意な減少が認められた(P < 0.005)。
結論
高レベル消毒前に採取したサンプルで測定した ATP と cfu/mL の間に有意な相関が認められた。予備洗浄および用手洗浄により、ATP および微生物量が有意に減少することが示された。ATP 測定は、ごくわずかな訓練で数分以内で実施でき、容易に解釈できる結果を得ることができる。本研究の結果は、高レベル消毒後の内視鏡汚染を検出するためのスクリーニングツールとしての ATP 測定の有用性に関する研究がさらに必要であることを示している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
消化器内視鏡(食道胃内視鏡と大腸内視鏡)の洗浄レベルの評価として、オーストラリアではで内視鏡の細菌培養により汚染を定期的にチェックすることがガイドラインで決められている。細菌培養はコロニー数測定のため少なくとも一晩の培養が必要であり、洗浄効果を直ちに知ることはできない、一方、ATP 測定は環境清掃や手指衛生の程度を簡便に評価する方法として利用されている。検体採取から測定結果表示まで数分であり、測定機器も安価である。しかしながら、細菌数と ATP の値には強い相関がないことが実用を阻んでいる。一方で、本論文のように、細菌数と弱いながらの相関があり日常的な洗浄評価方法として培養法の補助に使用できるかもしれない。ただし、現場で使用する酵素洗浄剤は ATP 値を上昇させる「正の効果」があるため、実際に現場で使用するにはさらに検討が必要である。
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