病院敷地の建物の解体中の空中浮遊アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)芽胞の濃度と、アゾール耐性を含む侵襲性アスペルギルス症の患者リスクの判定★
Airborne Aspergillus fumigatus spore concentration during demolition of a building on a hospital site, and patient risk determination for invasive aspergillosis including azole resistance
L. Wirmann*, B. Ross, O. Reimann, J. Steinmann, P-M. Rath
*University Hospital Essen, Germany
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e91-e97
背景
免疫不全患者における侵襲性アスペルギルス症は、病院または病院隣接地での解体と関連している。近年、侵襲性アスペルギルス症のもっとも一般的な薬剤であるアゾールに耐性を示すアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)の臨床株が西欧で出現しており、世界的に拡散している。
目的
病院建物の解体により発症した患者において、アゾール耐性を含む侵襲性アスペルギルス症の潜在的リスクを究明すること。
方法
解体前・解体期間中・解体後のエアサンプリング、アゾール耐性のスクリーニング、非感受性分離株の遺伝子タイピング、および非感受性分離株を解体期間のアゾール耐性侵襲性アスペルギルス症患者の菌株と比較する。
結果
A. fumigatus 芽胞の平均濃度は、解体前(17.5 コロニー形成単位[cfu]/m3)、解体中(20.8 cfu/m3)(P = 0.26)、解体後(17.7 cfu/m3)(P = 0.33)の 3 期間において有意差がなかった。臨床医により確認された侵襲性アスペルギルス症症例数の解体期間と解体前年との比較では、有意差がみられなかった(44 例 対 42 例)。A. fumigatus 分離株 200 株のうち 30 株(15%)はアゾール耐性であった。アゾール耐性の環境・臨床分離株のマイクロサテライトをポリメラーゼ連鎖反応によって増幅し、遺伝子タイピングを行ったところ、多クローン性の分布を示した。
結論
戸外での解体作業中、予防策の実施によって、免疫不全患者においてアゾール耐性を含む侵襲性アスペルギルス症リスクは増加しないことが、結果より示唆される。これらの結果を確認するために、さらなら前向き研究が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ビルの解体工事中のアスペルギルスの飛散と免疫不全患者の感染症発症について調べた論文である。解体中のエアサンプリングでは A. fumigatus の明らかな飛散の増加が見られた。この研究では、感染リスクの増加は見られなかったものの、リスクとして捉え、対策を行う重要性が再確認された。この研究では、解体現場での散水、病棟の工事現場に面した窓の締め切り、免疫不全患者が移動する際のマスク着用など複数の対策がとられていた。
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