院内発症ニューモシスチス感染症の検討:アウトブレイク中およびアウトブレイク後のニューモシスチス遺伝子型の縦断的スクリーニングの有用性★★
Investigation of nosocomial pneumocystis infections: usefulness of longitudinal screening of epidemic and post-epidemic pneumocystis genotypes
G. Nevez*, S. Le Gal, N. Noel, A. Wynckel, A. Huguenin, Y. Le Govic, L. Pougnet, M. Virmaux, D. Toubas, f, O. Bajolet
*Université de Bretagne Loire, France
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 332-345
背景
2008 年 9 月 から 2009 年10 月にかけて Reims University Hospital(フランス)の腎臓病棟において、患者 25 例(うち 22 例は腎移植レシピエント)がニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)感染症を発症したが、この病棟では過去 14 年間に散発症例が4 例診断されたのみであった。
目的
このアウトブレイクについて、患者の接触者および P. jirovecii 遺伝子型を調査した。
方法
伝播マップを作成した。クラスター内の患者(18 例がニューモシスチス肺炎患者、7 例が保菌患者)、関係のない対照患者 10 例(6 例がニューモシスチス肺炎患者、4 例が保菌患者)、アウトブレイク後 3 年間に同じ病棟で P. jirovecii 感染症と診断された他の 23 例(9 例がニューモシスチス肺炎患者、14 例が保菌患者)について、P. jirovecii 遺伝子型をDHPS、ITS および mtLSU rRNA 配列を用いて決定した。
結果
同じ遺伝子型の菌を保有する患者間で、11 件の接触が観察された。ニューモシスチス肺炎患者 3 例および保菌患者 1 例が、index case(発端症例)の可能性があると思われた。クラスター集団および対照集団で最も多く認められた遺伝子型は同じであった。しかし、その頻度はクラスター集団の方が対象集団より有意に高かった(P < 0.01)。同じ遺伝子型がアウトブレイク後の集団でも同定されたことから、同じ菌株がさらに第 2 のアウトブレイクを生じたもので、感染予防策の破綻と同時期であったことが示唆された。
結論
これらの結果は、ニューモシスチス肺炎患者と保菌患者の両方が感染源となる可能性について、新たなデータを追加するものである。感染患者(保菌患者を含めて)のP. jirovecii 遺伝子型について縦断的にスクリーニングを行っていくことは、病院内におけるこの真菌の循環を明らかにする上で必要であると考える。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
現在、P. jirovecii 感染症は、既に感染していた菌が再活性化して発症するよりも、新規に外部から感染する方がより多いと考えられている。腎移植患者が院内で P. jirovecii 感染症患者に接触し、新規に感染し、集団発生した例は海外・国内ともに認められていたが、本報告では、アウトブレイクがいったん終息した数年後まで含めて解析した点が特に評価できる。複数の菌株が同時に感染している可能性や、同じ菌株による第 2 のアウトブレイクが生じた要因、さらには ST 合剤による化学予防の期間に関しても、本報告の内容から考察できる課題は多い。一読をお勧めする。
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