季節性インフルエンザワクチン接種の臨床効果:免疫不全患者におけるインフルエンザ A(H1N1)のアウトブレイク 2 件の特徴
Clinical efficacy of seasonal influenza vaccination: characteristics of two outbreaks of influenza A(H1N1) in immunocompromised patients
I. Helanterä*, R. Janes, V.-J. Anttila
*Helsinki University Hospital, Finland
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 169-174
背景
インフルエンザ A(H1N1)は免疫不全患者において重篤な合併症を引き起こす。免疫不全患者における季節性インフルエンザワクチン接種の有効性は疑問視されてきた。
目的
免疫不全患者におけるインフルエンザ A(H1N1)のアウトブレイク 2 件について述べること。
方法
我々の施設でインフルエンザ A(H1N1)のアウトブレイクが 2 件発生した。2014 年には腎移植または膵腎同時移植後早期の患者を含む腎移植病棟で、2016 年には悪性腫瘍の化学療法を受けた患者を含む腫瘍病棟で起こった。これらのアウトブレイクを引き起こした要因および季節性インフルエンザワクチン接種の臨床効果を解析した。
結果
患者計 86 例がアウトブレイク中にインフルエンザ A(H1N1)に曝露され、そのうち季節性インフルエンザワクチンの接種状況が不明な患者は 10 例であった。ワクチン非接種患者 38 例のうちインフルエンザ A(H1N1)に感染した患者が 20 例であったのと比較して、ワクチン接種患者では 38 例中 3 例のみであった(P = 0.02)。インフルエンザに関連する死亡は非接種患者では 38 例中 7 例であったのと比較して、接種患者では 38 例中 1 例であった(P = 0.06)。アウトブレイク 2 件の共通の要因には、免疫不全患者の治療を目的として設計されていない古い施設が挙げられた。ワクチン接種はすべての患者に無料で提供されたにもかかわらず患者のワクチン接種率は低く、40 ~ 70%であった。移植病棟の医療従事者のワクチン接種率は低かったが(46%)、腫瘍病棟の医療従事者においてはワクチン接種率は高い(92%)にもかかわらずアウトブレイクが発生した。
結論
免疫不全患者において季節性インフルエンザワクチンは臨床的に有効であり、インフルエンザ感染のリスク低下および死亡率の低下傾向がみられた。これらのアウトブレイク 2 件に関し可能性のある複数の原因が明らかになり、さらなるアウトブレイクを予防するため医療従事者の継続的な意識が求められる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
抗がん剤などを投与されている免疫抑制患者において、ワクチン接種群と非接種群に分けてインフルエンザの罹患率を比較し、ワクチン接種の有効性を示した論文である。ただし本文には本研究の限界として、後向き研究であること、症例数が限られていること、個々の症例の背景が様々で二群間で調整されていないことなどが述べられている。
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