「VIOLET」:個人防護具の使用に関する医療従事者のトレーニングを目的とした蛍光ベースの模擬演習

2018.06.28

‘VIOLET’: a fluorescence-based simulation exercise for training healthcare workers in the use of personal protective equipment


B. Poller*, S. Hall, C. Bailey, S. Gregory, R. Clark, P. Roberts, A. Tunbridge, V. Poran, B. Crook, C. Evans
*Sheffield Teaching Hospitals NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 229-235
背景
重大な影響を及ぼす感染症(high-consequence infectious disease:HCID)の患者をケアする医療従事者は、個人防護具(PPE)を着用するなど、病原体の曝露からの防御が必要である。PPE のそれぞれの器具の安全性を組み合わせることでプロテクションが発揮される訳であるが、それらの安全かつ正確な使用には、十分なトレーニングと習熟が欠かせない。しかしながら HCID に備えて用いる PPE の組み合わせについては、エビデンスとなるデータもトレーニングも不十分であり、医療従事者間でもかなりのばらつきがある。
目的
HCID 疑い患者のアセスメントにおいて、使用する PPE の組み合わせや脱衣手順に関し、エビデンスに基づいた評価法やトレーニングツールを開発すること。
方法
VIOLET(Visualising Infection with Optimised Light for Education and Training)は、UV 蛍光トレーサーを含有する疑似体液を放出することができる医療用マネキンである。遠隔操作による指示に応じて、マネキンは吐物(青)や咳(赤)を出し、下痢を起こし(黄)、汗(オレンジ色)をかくことができる。医療スタッフは PPE を装着して「患者」のケアにあたり、これらの体液に曝露されながら HCID のリスクアセスメントを行うことになる。脱衣前後の PPE の汚染が UV 光線下で可視化され、ボディマッピングされる。使用時に観察された所見と参加者へのフィードバックも記録されるため、トレーニング演習の一環ともなる。
結果
さまざまな曝露イベントによってひどい汚染がみられ、使用した PPE と脱衣手順の評価が可能であった。観察データと参加者へのフィードバックにより、トレーニング法としてその利点と成功が立証された。
結論
VIOLET を用いた模擬演習は、PPE の組み合わせとその評価に関するエビデンスを提供でき、さらに医療スタッフの PPE 装着と安全な脱衣についてのトレーニングに際し、有用な手段となるといえる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
数種類の体液を出すことができる医療用マネキンを使用した、汚染の程度とプロテクションの効果の調査である。調査状況は抄録本文からは具体的に想像しにくいため、論文中の写真を参照いただきたい。体液の排出は実際の状況を反映するつくりになってはいるが、曝露量・感染性ともに高い状況での想定とみてよいであろう。紫外線による全身の汚染状況の可視化装置は大掛かりであり、実用化されても限られた施設になると予想する。

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