集中治療室(ICU)で獲得された菌血症と ICU における死亡および退院:適切な方法を用いた時間依存性交絡への対処

2018.05.31

Intensive care unit (ICU)-acquired bacteraemia and ICU mortality and discharge: addressing time-varying confounding using appropriate methodology


K.B. Pouwels*, S. Vansteelandt, R. Batra, J.D. Edgeworth, T. Smieszek, J.V. Robotham
* National Infection Service, Public Health England, UK
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 42-47
背景
多くの場合、研究では時間依存性交絡が無視されたり、または時間依存性交絡の補正に不適切な方法が用いられることがある。
目的
適切な方法を用いて、集中治療室(ICU)で獲得された菌血症が ICU における死亡および退院に及ぼす影響を推定すること。
方法
ロンドンの教育病院 1 施設の一般 ICU に 2 日を超えて滞在し、滞在当初の 2 日間は菌血症に罹患していなかった患者において、ICU で獲得された菌血症に関連した ICU 死亡率および退院率を推定するため、逆確率重み付け法による周辺構造モデルを用いた。比較のため、(i)ベースラインの交絡因子のみを補正した従来の Cox モデル、(ii)ベースラインおよび時間依存性交絡因子を補正した Cox モデルを用いて同様に関連性を評価した。
結果
逆確率重み付け法による周辺構造モデルを用いると、菌血症は ICU 死亡率の上昇と関連しており(原因特異的ハザード比[HR]1.29、95%信頼区間[CI]1.02 ~ 1.63)、また、ICU 退院率の低下と関連していた(原因特異的 HR 0.52、95%CI 0.45 ~ 0.60)。2 日を超えてなお ICU に滞在しており菌血症の既往がない患者において、ICU で獲得されたすべての菌血症症例を予防すれば、60 日まで ICU の死亡の 8.0%は防げる可能性があった。時間依存性交絡因子を補正した従来の Cox モデルを用いると、大きく異なる結果が得られた([ICU における死亡]原因特異的 HR 1.08、95%CI 0.88 ~ 1.32、[ICU 退院]原因特異的 HR 0.68、95%CI 0.60 ~ 0.77)。
結論
本研究において、逆確率重み付け法による周辺構造モデルを用い、菌血症を獲得したタイミングおよび時間依存性交絡を補正した後でさえ、ICU で獲得された菌血症は ICU 退院の 1 日あたりのリスクの低下および ICU における死亡リスクの上昇と関連した。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
菌血症をはじめとする感染症の疫学研究においては、様々なバイアスに注意しなければならない。本研究はそのような想定しうるバイアスについて、最近の様々な統計的手法を用いて可能な限り調整したもので、それでも ICU で発症する菌血症は ICU 内での死亡や ICU からの退室の遅延に関連することを示した研究である。

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