熱傷集中治療室における集学的感染制御の考え方:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)のアウトブレイクから得られた教訓
A multimodal infection control concept in a burn intensive care unit – lessons learnt from a meticillin-resistant Staphylococcus aureus outbreak
C. Baier*, R. Ipaktchi, E. Ebadi, A. Limbourg, T.R. Mett, P.M. Vogt, F.-C. Bange
*Hannover Medical School, Germany
Journal of Hospital Infection (2018) 98, 127-133
背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は、熱傷病棟で検出されることが多い病原体である。熱傷患者は MRSA 獲得の感受性が特に高く、MRSA の拡散は熱傷病棟におけるアウトブレイクの原因となる可能性がある。
目的
MRSA アウトブレイクの特性および制御の成功について報告すること、また集学的感染制御の考え方を示すこと。
方法
既存の感染制御の考え方に加えて、MRSA についての毎週の検出率スクリーニング、消毒の強化、入院の制限、および短期間の病棟閉鎖など、いくつかの制御策を実施した。疫学調査および環境調査を実施した。アウトブレイク由来の分離株を、パルスフィールド・ゲル電気泳動および spa タイピングにより分析した。熱傷病棟における MRSA アウトブレイクに焦点を当てて PubMed 検索を実施した。
結果
この院内獲得 MRSA のアウトブレイクでは、7 か月間に患者 8 例が感染し、感染率は 8%であった。疫学調査および環境調査から患者‐患者伝播が示唆され、これは細菌分離株の分子解析により単クローン性パターンが示されたことで確認された。熱傷病棟における他のアウトブレイクからの所見と一致して、患者スクリーニングおよび一時的な病棟閉鎖などの方策の実施により、アウトブレイクが制御された。
結論
熱傷病棟において MRSA を含むすべての多剤耐性微生物の拡散を制御するには、包括的な考え方が必要とされる。MRSA の保菌または感染を認める患者が主要なリザーバと考えられる場合は、これらの患者の他病棟への移動または一時的な病棟閉鎖に加えて、清掃の強化が、伝播イベントを阻止するために極めて効果的な方策である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
古典的なアウトブレイク調査と分子疫学的解析の結果、単一クローンの施設内アウトブレイクが証明された一例である。施設部署における伝播ルートは様々であり、日常的に包括的かつ効果的な感染予防策の実践が重要である。
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