無生物表面における長期乾燥後のアシネトバクター・ピティー(Acinetobacter pittii)のバイオフィルム形成★★
Acinetobacter pittii biofilm formation on inanimate surfaces after long-term desiccation
Z. Bravo*, I. Chapartegui-González, M. Lázaro-Díez, J. Ramos-Vivas
*Instituto de Investigación Valdecilla IDIVAL, Spain
Journal of Hospital Infection (2018) 98, 74-82
背景
医療環境における病原性微生物の生存は、院内感染において重大な役割を果たす。こうした苛酷条件下で院内感染起因病原体の生存を可能にするメカニズムの 1 つが、これら病原体の、乾燥に耐え、バイオフィルムを形成する能力である。
目的
不活性表面および生理食塩水の微生物生態系におけるアシネトバクター・ピティ(Acinetobacter pittii)分離株の生存行動を調査すること。
方法
A. pittii 臨床株 5 株を白衣の布片、ガラス面およびプラスチック面にスポット、または無菌生理食塩水に接種し、室温で 43 日間モニタリングした。
結果
固体表面における生存性は、使用した分離株の培養増殖能に悪影響を及ぼしたが、ストレスを受けた一部の細胞は少なくとも試験期間が終わるまで生存した。平均して、A. pittii の培養増殖能は、白衣、プラスチック面およびガラス面でそれぞれ 77.3%、80.9%および 68.1%低下した。しかし、生理食塩水では、集団の約 85.6%が培養増殖能を維持した。培養増殖能は、生細胞/死細胞同時染色で示されたように、細胞膜が無傷な細胞の生存と相関していた。ピルビン酸ナトリウムを培地に追加することにより、全条件で分離株の培養能が上昇したが、全般的に A. pittii 集団は、生存可能であるが培養可能な状態にはならなかった。
結論
長期乾燥後、栄養培地で栄養を得ると、すべての A. pittii 株がバイオフィルム形成能を保持するか増強したことから、A. pittii は乾燥から容易に回復し、再水化後に付着因子を発現して新しい宿主に感染する可能性があることが示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
アシネトバクター属には現在 49 種が登録され、なかでも A. calcoacetics/baumanii complexはヒトにおける肺炎、菌血症、創感染症、髄膜炎、尿路感染症などの起炎菌として知られている。近年、A. pitti が臨床分離株として報告されるようになり、カルバペネム耐性(NDM-1)を示すものも出現し、注目されている。本菌の病原因子については十分な報告はない。本論文では乾燥状況下で増殖力低下あるものの生存しており、栄養状態の改善により再増殖し、バイオフィルムを形成することが確認された。本菌は NDM-1 産生菌が中国、マレーシア、韓国で報告され、さらに EU では海外渡航のない事例での本菌の分離もあり、今後院内感染の原因となる耐性菌として日本でも問題となる可能性があり注意が必要である。
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