英国の腎臓病科に発生した英国初の cfr 遺伝子を有するリネゾリドおよびグリコペプチド系耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)保菌のアウトブレイク★★
First outbreak of colonization by linezolid- and glycopeptide-resistant Enterococcus faecium harbouring the cfr gene in a UK nephrology unit
T. Inkster*, J. Coia, D. Meunier, M. Doumith, K. Martin, R. Pike, L. Imrie, H. Kane, M. Hay, C. Wiuff, J. Wilson, C. Deighan, K.L. Hopkins, N. Woodford, R. Hill
*Queen Elizabeth University Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 397-402
目的
英国の腎臓病科に発生した cfr 遺伝子を保有するリネゾリドおよびグリコペプチド系耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)保菌のアウトブレイクについて報告すること。
方法
リネゾリド耐性 E. faecium の分離株をパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)を用いて分類し、リネゾリド耐性を付与する伝播性 cfr 遺伝子の有無をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および遺伝子配列解析(シーケンス解析)を用いて調べた。徹底した環境清掃、全患者のスクリーニング(初回および以降は週 1 回)、および感染制御に関する標準的な注意事項の遵守状況のモニタリングを実施した。
結果
本研究の開始前から腎疾患を有する患者 5 例で、直腸にリネゾリド耐性 E. faecium の2週間以上の保菌が認められた。初発症例はインドから英国に旅行中の 57 歳男性であった。また、別の 1 例では、PFGE プロファイルの異なるリネゾリド耐性 E. faecium が踵部の創傷から分離された。全分離株が cfr 遺伝子を保有していることが PCR 法および Sanger 法による遺伝子配列解析によって確認され、いずれの分離株もグリコペプチドに対する耐性を獲得していた(VanA 表現型)。
結論
本稿は、腎臓病科の患者 5 例に影響を及ぼした、cfr 遺伝子を有するリネゾリドおよびグリコペプチド系耐性 E. faecium 単一株の英国初となるアウトブレイクについて報告するものである。積極的な感染制御策の実施後 2 週間以上にわたって、さらなる症例は検出されていない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
リネゾリド耐性(LZD:R)を示す cfr 遺伝子を保有するGRE(グリコペプチド系抗菌薬耐性腸球菌)によるアウトブレイクであったが、徹底した感染制御(個室化、塩素系消毒剤による環境整備ならびに器具清拭の強化、血圧計マンシェットなどの患者専用器具の導入、手指衛生の強化、毎日のクロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)による皮膚清拭、患者専用担当看護師によるケアなど)により、5 例のみで終息させることができた。LZD:R は、cfr 遺伝子以外に、optrA 遺伝子があるが、本菌は前者が陽性、後者は陰性であった。本態性遺伝子はプラスミド経由でブドウ球菌などにも種を越えて伝達されることが報告されており、感染対策上厄介である。一方、海外で医療を受けたことのある患者による各種耐性菌の輸入は、一種類ではなく多種類の耐性菌を保菌し、持ち込んでいる可能性があるため、入院時の耐性菌スクリーニングは重要である。本例でもインドからの帰国者であり、リネゾリド耐性・グリコペプチド耐性腸球菌以外に、カルバペネム耐性のグラム陰性菌も同時に検出されていた。
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