集中治療室向け多施設共同教育プログラムによるカテーテル関連血流感染の制御★★

2017.11.30

Controlling catheter-related bloodstream infections through a multi-centre educational programme for intensive care units


M. Musu*, G. Finco, P. Mura, G. Landoni, M.F. Piazza, M. Messina, M. Tidore, M. Mucci, M. Campagna, M. Galletta
*University of Cagliari, Italy
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 275-281
背景
中心静脈カテーテルの挿入および留置に関連する血流感染は、集中治療室(ICU)における医療関連感染症の原因として最も高頻度に認められ、入院期間の延長および医療費追加の原因となっている。
目的
医療従事者向け教育プログラムが感染症の程度および傾向に有意な変化をもたらすかどうかを検討すること。
方法
本研究は、2012 年 7 月から 2014 年 8 月までイタリアの 5 カ所の ICU で実施した。感染を制御するためのサーベイランスおよび教育的介入を適用した。手指消毒手順の遵守状況を相対的リスクおよび 95%信頼区間に基づいて評価した。中断時系列分析を用いて、介入中の感染症の程度および傾向の変化を検討した。
結果
手指消毒手順の遵守率は、すべての医療従事者群で介入中に改善が認められたが、医師の遵守率が最も低かった(看護師 52.4%~92.1%、看護助手 71.0%~92%、医師 71.0%~92%; P < 0.001)。介入中に、中心静脈カテーテル関連血流感染症発症率の有意な低下(21%~55%)が認められた。毎月の感染症傾向に軽微な改善も認められたが、統計学的に有意ではなかった。
結論
中心静脈カテーテルの取り扱いよりもむしろ全般的に優れた感染管理に焦点を当てた教育プログラムは、改善が時間の経過とともに持続されなくても、中心静脈カテーテル関連血流感染症発症率の低下につながった。実施状況のフィードバックを継続的に実施し、すべての医療従事者において指針への長期的な遵守を促すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
血流感染、特に中心静脈カテーテル関連血流感染症(CRBSI)は医療関連感染の約 10%を占め、死亡率はときに 25%に達する。また、職員教育と遵守状況をオーディットし、その結果を現場へ還元することにより、CRBSI の発生率を 40 ~ 89%減少させることができる。プロセスサーベイランス、アウトカムサーベイランス、遵守率の継続的観察、教育、発生率の現場への報告、感染対策の実施状況のフィードバックの 6 つの介入を防止策として CDC では推奨している。本論文ではポスターや説明文等を ICU 内に掲示し、毎月のミーティングにおいて、ビデオや実地演習を含む教育訓練と現状の手順について討論をし、自主的にこれらを行うことで感染対策実施のための動機づけをおこなった。その結果手指衛生の遵守率が上昇し、CRBSI の発生率が最大 55%減少した。しかしながら、医師は、手指衛生の遵守率に加え、教育訓練のためのミーティングへの参加率も他の職種に比し低いことが同時に指摘されており、今後の解決すべき課題である。

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