咽頭スワブを用いたAlere™ i Influenza A&B near-patient testの診断精度および費用の分析

2017.11.30

Diagnostic accuracy and cost analysis of the Alere i Influenza A&B near-patient test using throat swabs


S. Davis*, A.J. Allen, R. O’Leary, M. Power, D.A. Price, A.J. Simpson, A. Tunbridge, L. Vale, M. Whiteside, C. Evans, M. Raza
*Sheffield Teaching Hospitals NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 301-309
背景
インフルエンザの診断において、臨床診断の感度だけでは不十分である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いた検査の感度は高いが、結果が得られるまでに時間がかかり、隔離および治療までの期間が延長する可能性がある。最近まで、臨床でルーチンに使用でき、感度が十分な near patient test(ベッドサイド検査、別名ポイント・オブ・ケアテスト:POCT)はなかった。
目的
適応外の咽頭スワブを用いて、Alere i Influenza A&B NPT(Alere Inc.、米国マサチューセッツ州ウォルサム)の診断精度、結果が得られるまでの時間、臨床的意義および費用について検討すること。
方法
費用モデルを用いた前向き、多施設共同(英国の国民保健サービス[NHS]病院 4 施設)、診断精度コホート研究。インフルエンザの疑いがある患者から咽頭スワブで検体を採取し、まず対照として従来の PCR を用いてインフルエンザであるかどうか調査した。次いで2 本目の咽頭スワブについて NPT を行った。
結果
計 827 例の被験者が組み入れられた。そのうち 589 例を本解析の適格とした。感度は 75.8%(95%信頼区間[CI]67.0 ~ 84.6)、特異度は96.8%(95%CI 95.2 ~ 98.3)であった。シェフィールドの病院(Northern General Hospital:82.1%、Royal Hallamshire Hospital:83.3%)およびそれ以外の病院(Doncaster Royal Infirmary:71.4%、Newcastle’s Royal Victoria Infirmary:50.0%)において、感度にばらつきが見られたが、特異度は高かった(92%~100%)。陽性反応的中度は 81.2%(95%CI 72.9 ~ 89.5)、陰性反応的中度は 95.6%(95%CI 93.9 ~ 97.4)であり、有病率は 15.4%であった。PCR の結果が得られるまでの期間の中央値は 1.1 日(院内検査室)および 5.2 日(院外検査機関)であった。隔離の結果は、インフルエンザ陽性の 75%が隔離されず、隔離された被験者の 69%がインフルエンザではなかった。被験者 1,000 例のコホートあたり、NPT によって削減できる診断以外の年間費用は215,040 ポンドであった。
結論
咽頭スワブを用いた Alere i NPT の初となる本前向き研究によって、高い特異度、季節性流行時における高い陽性反応的中度、結果の迅速な利用可能性が示され、相当な費用削減につながる可能性が示唆された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本研究で用いられたキットは、15 分で結果が得られる核酸増幅検査で、等温で反応を進行させる点が特徴である。同一患者からの咽頭スワブについて、インフルエンザを含む呼吸器系ウイルスの PCR と、被検キットの結果を比較したが、この被検集団でのインフルエンザの有病率は 15%であった。Alere i NPT の検出力自体は、概してイムノクロマト法とあまり差がない程度であったが、本研究の優れている点は、隔離を含む費用効果についても十分なデータを得、評価できたことにある。

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