ドイツ北東部の病院以外のケア現場における感染制御策および多剤耐性病原体の有病率:1日間の点有病率調査の結果★

2017.11.30

Infection control measures and prevalence of multidrug-resistant organisms in non-hospital care settings in northeastern Germany: results from a one-day point prevalence study


N.O. Hübner*, K. Dittmann, R. Begunk, A. Kramer, the Action Group Infection Prevention (AGIP)
*University Medicine Greifswald, Germany
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 234-240
背景
多剤耐性病原体(MDRO)の疫学および感染制御策に関する既存の文献の多くは、依然として病院の医療現場に焦点を当てている。
目的
2015 年、ドイツのメックレンブルグ‐西ポメラニア州において、長期ケア施設(LTCF)、リハビリテーションクリニック、および在宅ケアサービスを対象に、MDRO の有病率、感染制御に関する構造的データ、およびケア現場間の紹介ネットワークを評価する横断的調査を実施すること。
方法
ルーチンの微生物学的データおよび構造的データ(MDRO スクリーニングのストラテジー)、ならびに紹介施設による MDRO 患者移送シートの遵守状況(ドイツ国内で義務付けられている)を用いた、任意、無記名式の点有病率調査。LTCF 24 施設、リハビリテーションクリニック 9 施設、および在宅ケアサービス 6 施設の計 39 施設のデータを分析した。
結果
最も報告が多かった病原体はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)であり、有病率は在宅ケアサービスで 2.09%、LTCF で 1.43%、リハビリテーションクリニックで 0.53%であった。紹介文書中の MDRO 状況に関する情報の欠落は、すべてのタイプの施設において、関連する重要な問題であった。
結論
本研究の結果は、急性期病院と病院以外のケア現場が疫学的に強くリンクしていることを示唆している。このことから、抗菌薬耐性の抑制の取り組みを成功させるには、取り組みを単一施設に限定するのではなく、紹介ネットワークで結びついている様々な現場を組み入れる必要があることは明らかである。同様のアプローチを用いた臨床現場での調査と比較すると、MRSA の有病率は病院と同等である。これに対し、ケア施設では、病院が持つ感染制御のリソースが不足している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
1 日間の点有病率調査はスナップショットサーベイランスとも呼ばれ、状況を大まかに把握したいときに、労少なく益多い手法である。この調査により、医療施設と非医療施設の MDRO がリンクしている可能性が示唆され、さらに、その状況において、非医療機関では感染制御に関するリソースが不足していることが浮かび上がった。

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