オーストラリアの血液透析外来患者における感染および抗菌薬使用の疫学:ビクトリア州サーベイランスネットワークによる 2008 年から 2015 年の知見
Epidemiology of infections and antimicrobial use in Australian haemodialysis outpatients: findings from a Victorian surveillance network, 2008-2015
L.J. Worth*, T. Spelman, S.G. Holt, J.A. Brett, A.L. Bull, M.J. Richards
*Victorian Healthcare Associated Infection Surveillance System (VICNISS) Coordinating Centre, Australia
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 93-98
背景
血液透析を要する慢性腎不全患者は感染のリスクが高い。
目的
オーストラリアの血液透析外来患者における血流感染および局所アクセス関連感染の負荷と静注抗菌薬の処方パターンを明らかにすること。
方法
利害関係者の協議後、サーベイランスネットワークを構築し、血液透析センターの自主参加と Victorian Healthcare Associated Infection Surveillance System Coordinating Centre によるデータ照合を実施した。感染と静注抗菌薬投与開始の定義は、米国疾病対策センターが用いた方法に基づくものであった。縦断的混合効果 Poisson 回帰を用いて、2008 年から 2015 年の期間の時間的傾向モデルを作成した。
結果
ビクトリア州の透析センター 78 カ所中 48 カ所がネットワークに参加し、78,826 患者月にわたり 3,449 イベントが報告された。血流感染、局所感染の発生率、および静注抗菌薬の投与率は、トンネル型中心ラインを用いる患者で100 患者月あたりそれぞれ 2.60、1.41、3.37であり、内シャント(動静脈瘻)の患者(100 患者月あたりそれぞれ 0.27、0.23、0.73)および人工血管内シャント(動静脈グラフト)の患者(100 患者月あたりそれぞれ 0.76、1.08、1.50)に比べてはるかに高かった。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が最も頻度の高い病原体であり、メチシリン耐性株(MRSA)が原因であったのは 14.0%であった。アクセス関連感染は、すべてのバスキュラーアクセス法において経時的に有意に減少した。研究期間全体で一貫して抗菌薬開始例のほぼ半数でバンコマイシンが用いられた。
結論
オーストラリアの血液透析患者では、血流感染および局所アクセス関連感染のリスクはトンネル型中心ラインにおいて最も高かった。黄色ブドウ球菌が感染の原因として最も頻度が高く、MRSA 発生率は低かった。今後のプログラムでは、感染予防の実施とこの集団での抗菌薬処方の適切性を評価すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
トンネル型中心ラインでの感染が、内シャントや人工血管内シャントに比べて多いのは、実際の臨床でも明らかであり、他国のデータでも示されている。ただし本研究では、血流感染と局所感染に分けて発生率を提示するとともに、リスクモデルを設定しているのが評価できる。静注抗菌薬の適正化にどのようにつなげていくかが課題であるが、この点は本邦でも同様であると思われる。
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