イングランド地方の総合病院における 2 歳未満の小児での RS ウイルスおよびライノウイルス関連の細気管支炎★★

2017.08.31

Respiratory-syncytial-virus- and rhinovirus-related bronchiolitis in children aged <2 years in an English district general hospital


S.P. Paul*, A. Mukherjee, T. McAllister, M.J. Harvey, B.A. Clayton, P.C. Turner
*Torbay Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2017) 96, 360-365
背景
細気管支炎は低年齢の小児の入院で最もよくみられる理由である。RS ウイルスに加えて、他のウイルスの関与も増えてきており、検査に関する指針も変更された。
目的
RS ウイルスによる細気管支炎で入院した低年齢の小児における臨床病理的な転帰をライノウイルスの場合と比較し、関連するリスク/疫学的因子を同定すること。
方法
細気管支炎と臨床診断されて入院し、RS ウイルスまたはライノウイルスのいずれかの検査結果が陽性であった 2 歳未満の小児を本研究の対象とした。呼吸器系ウイルスの拡大パネルを用いたポリメラーゼ連鎖反応検査結果が陰性であった症例を対照群とした。性別、リスク因子、呼吸器サポート、静脈内輸液、および抗菌薬に関するデータを後向きに収集した。評価項目には、入院期間、重症ケアユニット/小児集中治療室への転室の必要性などを含めた。
結果
鼻咽頭吸引検体 437 検体中 227 検体が、RS ウイルス(N = 162)またはライノウイルス(N = 65)のいずれかが陽性であった。症例の年齢の中央値は 3 か月で、75%がリスク因子を 1 つ以上保有していた。リスク因子の数はライノウイルス群のほうが多かった(P = 0.004)。RS ウイルスのシーズン以外ではライノウイルスが症例の大半を占めた(P < 0.01)。ライノウイルス関連の細気管支炎のほうが入院期間が長期(7 日間を超える)であり(P < 0.05)、胸部 X 線検査および/または抗菌薬を必要とした症例が多かった(P < 0.05)。静脈内輸液および呼吸器サポートの使用率はライノウイルス群のほうが高かったが、その差は有意ではなかった。
結論
ライノウイルスは細気管支炎に関連する病原体として 2 番目に最もよくみられ、1 年を通して分離される。入院期間の長期化につながるリスク因子(訳者注:慢性肺疾患、未熟児、先天性心疾患、遺伝子異常)を有する症例では、この点が重要となると考えられる。さらに研究を進め、とりわけ従来の RS ウイルスのシーズン以外で高頻度にみられるこの病態においてライノウイルスが果たす正確な役割を明らかにする必要がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
2 歳未満の小児におけるウイルス性急性細気管支炎は、入院が必要な病態であり、院内感染の原因ともなる。咳と呼吸数増加を主症状としているが、起炎ウイルスとしては RS ウイルスが最も頻度が高く、冬期はその傾向が強くなる。これまで鼻咽頭吸引液の RS ウイルス検査により診断や感染対策の決定に利用していたが、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、パレコウイルス、ボカウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルスなども同様の病態を呈するため、最近の英国 NICE や米国小児科科学会のガイドラインでもルーチンでの鼻汁からの RSV 検査を推奨していない。また、ライノウイルスは、RSV シーズン外での細気管支炎の原因ウイルスとしてクローズアップされており、小児や成人にも感染し病院内でのアウトブレイクすることもあり、感染対策上注意が必要である。本論文では 2 歳未満の乳幼児におけるライノウイルスの臨床的意義を再認識させる重要な知見であるが、起炎ウイルス検索に網羅的 PCR を実施しており費用対効果の面で検討する必要がある。

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