リアルタイム PCR 法による慢性腎疾患患者の直腸スワブからのカルバペネム耐性微生物の定着の検出
Detection of colonization by carbapenem-resistant organisms by real-time polymerase chain reaction from rectal swabs in patients with chronic renal disease
T.F.T. Rezende*, A.M. Doi, M.G. Quiles, A.C.C. Pignatari, S. Manfrendi, C. Grothe, M. Taminato, D.A. Barbosa
*Federal University of São Paulo/UNIFESP/Brazil, Brazil
Journal of Hospital Infection (2017) 96, 123-128
背景
カルバペネム耐性微生物の定着は、医療関連環境において、感染のリスクを増大させ抗菌薬耐性の蔓延に寄与する重大な問題である。カルバペネム耐性微生物への感染および伝播のリスクは慢性腎不全患者で高く、サーベイランス培養が感染制御プログラムの要素として推奨されている。
目的
慢性腎不全患者の大規模集団における、直腸スワブを用いたカルバペネム耐性微生物の定着の評価において、表現型による診断法と分子的診断法を比較すること。
方法
大学の 3 次医療施設の慢性腎臓病患者 546 例から、異なる 2 時点で、計 1,092 の直腸スワブ検体(ESwab™)を採取した。患者は、保存的治療群(129 例)、透析療法群(217 例)、および移植群(200 例)の 3 群に分けた。カルバペネマーゼ産生の表現型スクリーニングおよび分子的スクリーニングとして、発色性の(CHROMagar™)KPC アガーと、コード化したカルバペネマーゼ遺伝子を標的としたマルチプレックスリアルタイム PCR(qPCR)法を検証した。また、発色性アガー上で発育した分離株について、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法および従来型の PCR 法による分析を行った。
結果
発色性アガーでは、1,092 の検体のうち 150(13.7%)がカルバペネム耐性微生物検出検体として同定された。従来型 PCR 法では、26 検体(2.4%)のみが KPC 型と確認された。スワブ検体から直接 qPCR 法を行った結果では、31 検体(2.8%)が KPC 型、39 検体(3.6%)が GES 型、3 検体(0.3%)が SPM 型陽性であった。カッパ係数は 0.256 であった。
結論
qPCR 法では、培養法に比べてより迅速に結果が得られ、医療現場、とくに慢性腎臓病患者におけるカルバペネム耐性微生物の拡散を抑制するための対策と介入を、迅速に実行することが可能となる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
慢性腎臓病患者 546 例に対し、入院時と 7 から14 日後の 2 回、直腸スワブで検体を採取し、カルバペネム耐性菌の存在を確認した論文である。保存的治療群、透析療法群、および移植群の 3 群に分けての解析では、移植群が一番保菌率が高く、次いで、保存的治療群であった。さらに、初回採取検体よりも 1 から 2 週間後に採取した 2 回目の検体での保菌率が高くなっていたことは気になるところである。
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