クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症による病院固定費および変動費の評価:施設のインセンティブおよび今後の研究の方向★

2017.04.30

Evaluation of fixed and variable hospital costs due to Clostridium difficile infection: institutional incentives and directions for future research


P. Ryan*, M. Skally, F. Duffy, M. Farrelly, L. Gaughan, P. Flood,E. McFadden, F. Fitzpatrick
*Trinity College Dublin, Ireland
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 415-420
背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)の経済的分析では、施設の意思決定者が向き合うインセンティブについて考えるべきである。感染予防の財政的利益の誇張を避けるため、固定費と変動費を区別すべきである。
目的
2015 年 8 月中の 3 次紹介病院での CDI 固定費および変動費を定量的に評価すること。
方法
ミクロ原価計算法による分析により、CDI アウトブレイクの追加費用を含めて患者あたりの CDI 費用を推定した。資源利用は、患者医療記録、薬局データ、管理資源投入量、給与および清掃/汚染除去費用の記録を調査した後に定量化した。
結果
CDI による費用増分は 75,680 ユーロ(患者あたり平均 5,820 ユーロ)で、主要なコスト・ドライバーは清掃、薬剤、入院期間であった。追加の入院期間は 1.75 ~ 22.55 日の範囲であった。CDI アウトブレイクに関係した 7 例に関しては、逸失病床利用日 58 日分(34,585 ユーロ)を除いて、費用は 30%増加した(患者あたり 7,589ユーロ)。したがって、CDI による総支出は 88,062 ユーロ(全患者での平均:6,773 ユーロ)であった。変動費節減の可能性は、1,026 ユーロ(17%)、アウトブレイクの費用を含めた場合は 1,768 ユーロ(26%)であった。抗菌薬専門薬剤師1 名への投資に見合うには、1 年間で CDI 47 症例の予防が必要である。CDI を5%、10%、20%予防することで、起因する費用が 4,403 ユーロ、8,806 ユーロ、17,612 ユーロ低減する。CDI に起因する入院期間増分が患者あたり 7 日増加すると、費用は 7,478 ユーロ、または 8,431 ユーロ(アウトブレイク費用を含めた場合)増加すると考えられる。
結論
CDI 費用の多くが固定費であるため、感染予防による費用節減の可能性は限定的である。今後の解析では、区別することとそれが施設の意思決定に及ぼす影響についてさらに効率的な考察をしなければならない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
これまで CDI の発生による費用が各国で算定されている。1 症例あたり、欧州では 5,798 ~ 11,202 ユーロ(約70万 ~ 約134万)(1ユーロ = 120日本円)、米国では2,992 ~ 29,000 ドル(33万 ~ 319万円)(1ドル = 110日本円)とされており、いずれにしても極めて高額である。本論文における CDI 発生による変動費の内訳は、約 75%が薬剤費、約 15%が消毒・清掃費用、約 10%が検査費用である。孤発例では、CDI 患者退院後の徹底清掃、過酸化水素による消毒、カーテン交換など、一方アウトブレイク時には、ベッドリネン交換やブランケットの廃棄、次亜塩素酸タブレットの使用、マットレス交換の費用が追加され、5 倍近く余分な費用が発生する。欧米での強毒株の流行により、CD 芽胞を徹底的に除去するための消毒清掃等に多くの費用が発生するためである。さらに、入院期間の延長や個室隔離による費用が上乗せされる。

同カテゴリの記事

2024.03.31
Risk factors for surgical site infection following orthopaedic surgery for fracture by trauma: a nested case-control study

T. Sato*, K. Shibahashi, M. Aoki, D. Kudo, S. Kushimoto
*Tohoku University Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2024) 145, 52-58



2015.08.31

Oseltamivir in influenza outbreaks in care homes: challenges and benefits of use in the real world

2016.10.31

Three-day regimen of oseltamivir for postexposure prophylaxis of influenza in wards

2017.06.29

Risk factors for KPC-producing Enterobacteriaceae acquisition and infection in a healthcare setting with possible local transmission: a case–control study

2006.02.28

Rate, risk factors and outcomes of catheter-related bloodstream infection in a paediatric intensive care unit in Saudi Arabia

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ