緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)血流感染後の長期死亡率

2017.03.31

Long-term mortality following Pseudomonas aeruginosa bloodstream infection


K.L. McCarthy*, D.L. Paterson
*University of Queensland, Australia
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 292-299
背景
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)血流感染症(BSI)は、かなり高い短期死亡率と関連する。この BSI に関連する長期死亡率に関するデータはほとんどない。
目的
感染後 1 年以内の死亡率および死亡と関連する有意な因子について記述すること。
方法
2008 年 1 月から 2011 年 1 月の間において、3 次病院 7 施設で緑膿菌培養陽性結果を後向きに特定した。詳細な疫学的、臨床的および転帰データを入手した。
結果
388 件の BSI エピソードを解析対象とした。感染症の大部分は院内獲得によるものであった。患者の併存症で最も高頻度でみられたのは、血液学的または腫瘍学的併存疾患であった。このコホートの 78%が、先行する 7 日間に医療デバイスを留置されていた。このコホートの 61%が適切な経験的治療を受けていた。全死因死亡率は 48 時間後で 4%、1 か月後で 19%、および 1 年後で 38%であった。48 時間後の死亡は、非院内獲得感染症、呼吸器併存疾患、最近のコルチコステロイド療法、および Pitt 菌血症スコア > 2 と関連していた。併存疾患と死亡との間には、感染後 7 日目以降に有意な関連が認められた。長期死亡(1 年後の死亡と定義)は、女性、血液学的または腫瘍学的併存疾患、Charlson 併存疾患指数 > 2、および最近のコルチコステロイド療法と関連していた。
結論
この毒性が高い病原体による感染症の、長期的な死亡原因における正確な役割について、さらなる研究が必要である。緑膿菌 BSI が患者死亡の直接的原因かどうかは明らかでない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
菌血症の予後はしばしば発症後 14 日以内、あるいは 28 日以内の死亡率で評価されることが多く、1 年といった長期間で評価することは少ない。本研究は緑膿菌 BSI 患者の実に38%が 1 年後に死亡しているという結果であった。ただし 1 年後の死亡と関連している因子としては腫瘍性疾患の有無や基礎疾患の有無などそれ自体が中長期的な予後規定因子と考えられる。筆者が結論しているように、死亡率が高いことはよく分かったが、緑膿菌 BSI がその直接的な原因かどうかは良く分からない。

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