米国の病院の洗濯室の表面から分離された vanA 陽性多剤耐性腸球菌属★

2017.02.28

vanA-positive multi-drug-resistant Enterococcus spp. isolated from surfaces of a US hospital laundry facility


K.E. Michael*, D. No, M.C. Roberts
*University of Washington, USA
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 218-223
背景
腸球菌属は、ヒトや動物の消化管に存在する常在菌である。腸球菌は重要な病原体でもあり、2007 年から 2010 年までの米国の院内感染の 14%は腸球菌によるものであった。
目的
バンコマイシン耐性腸球菌属の有無およびその季節性について、病院のリネン類を処理する洗濯室を調査すること。
方法
2015 年、洗濯室の汚れた場所と清潔な場所から、表面の試料を 4 回採取した。生化学的手法によって同定し、感受性検査を実施した。さらに複数部位塩基配列タイピング(MLST)法と、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いた獲得性のvanA・vanB 遺伝子と染色体性のvanC1 遺伝子の検出を行い、eBURST 解析を実施して、分子疫学的特徴を明らかにした。
結果
汚れた場所から採取された 120 株中 64 株(53%)、および清潔な場所から採取された 120 株中 10 株(8%)の計 74 株が、vanA 陽性の多剤耐性腸球菌であった。エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)は14 の ST 型に属した(ST16、17、18、117、186、280、324、412、584、664、665、736、750および1038)。一方E. faecalis の分離株 2 株は、共に ST109 であった。
結論
洗濯室の汚れた場所でのバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の分離率は、清潔な場所と比べて有意に高かった(53%対8%)。
本研究の重要性および影響
本研究は、VRE の有無について業務用の洗濯室を調査した最初の研究であり、こうした洗濯室は未知のリザーバである可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本研究では、汚染の多い場所ほど腸球菌が多く分離され、バンコマイシン耐性を示していた。洗濯室の VRE の汚染の持続、洗濯物の新たな汚染の発生、除去と衛生管理、作業員への伝播リスクなど、本研究に関連して問題となる課題は多い。今後の知見の蓄積が待たれる。

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