心臓手術後の患者における気管内チューブ PneuX 使用による気管内チューブの細菌定着率

2017.01.31

Incidence of endotracheal tube colonization with the use of PneuX endotracheal tubes in patients following cardiac surgery


E.L. Senanayake*, R. Giri, S. Gopal, A. Nevill, H. Luckraz
*Heart and Lung Centre, UK
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 81-86
序論
人工呼吸器関連肺炎(VAP)は心臓手術を受けた患者の最大 25%に発症する。気管内チューブの細菌定着は VAP の一因となる。気管内チューブ PneuX は、心臓手術を受けた高リスク患者の VAP を半減させることが示されている。本稿は、PneuX と標準的な気管内チューブの間の VAP に関連した細菌定着の二次分析について報告する。
方法
この無作為化対照比較試験において、患者を A 群(気管内チューブ PneuX、120 例)または B 群(標準的な気管内チューブ、120 例)に 1:1 で無作為に割り付けた。左室機能障害(< 50%)の有無によらず、待機的および緊急心臓手術を受けた患者(年齢 >70 歳)を試験に組み入れた。術後 VAP 発症率と気管内チューブ内の細菌定着分析(234 例)を、挿管を< 24 時間、24 ~ 48時間、> 48 時間必要とした患者について評価した。
結果
ベースラインの患者背景は同等であった。VAP は、A 群では B 群と比較して少なかった(10.8%対 21%、P = 0.03)。VAP 発症率は各時点で A 群のほうが低かった。> 48 時間の挿管を必要とした患者では、A 群のほうが気管内チューブの細菌定着率が低かった。定着した細菌の種類に差は認められず(P = 0.5)、菌量(cfu)の平均数にも差は認められなかった(A 群および B 群でそれぞれ4.35 × 107[1.18 × 108]および2.16 × 108[1.24 × 109]、P = 0.8)。
結論
気管内チューブの細菌定着は、早発性 VAP において重要な役割を果たしてはいないようである。挿管時間が長いほど気管内チューブ PneuX の細菌定着が減少する傾向がみられた。このことは、遅発性 VAP の発症率を低下させることに影響を及ぼす可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
欧米で販売されている PneuXTM という気管内チューブとその装置の有用性に関する研究である。PneuXTM は低用量、低圧のシリコン製カフを備え、同心円的に均等に膨らむことによって気管粘膜との隙間を最小限にしている。またカフ圧を20 ~ 30 mmHgに均等に維持するモニターと、3 つの声門下吸引ポートを有する。さらにパリレン(パラキシリレン樹脂)コーティングによりバイオフィルムの形成阻害効果が期待される。本研究は PneuXTM を用いて VAP の発症率低下を示した研究の二次解析の結果として微生物学的評価を報告したものである。

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