脂質エマルジョンが静脈栄養剤中の微生物増殖に及ぼす影響に関するシステマティックレビューおよびメタアナリシス★

2016.12.21

Systematic review and meta-analyses of the effect of lipid emulsion on microbial growth in parenteral nutrition


P.D. Austin*, K.S. Hand, M. Elia
*University of Southampton, UK
Journal of Hospital Infection (2016) 94, 307-319
背景
静脈栄養剤中の脂質は微生物増殖を促進すると考えられるため、推奨では脂質静脈栄養(脂質エマルジョン)の単一容器からの注入を 24 時間までに制限している(無脂質の静脈栄養剤では 48 時間まで)。しかし、この推奨に関連する科学的な根拠は曖昧である。
目的
静脈栄養剤中の微生物増殖に影響を及ぼす因子を調べること。
方法
システマティックレビューおよびメタアナリシスにより、静脈栄養注入剤中の微生物増殖に対する栄養素の 48 時間にわたる影響を、増殖率(GR = log10[48 時間時点でのコロニー形成単位(cfu)/mL]/[0 時間時点でのcfu/mL])を用いて検討した。
結果
静脈栄養剤中の微生物増殖率に影響を及ぼす因子は、グルコース、微生物種、温度、浸透圧、ビタミン類の存在、微量元素と脂質、およびアミノ酸プロファイルなどであった。マッチさせないデータセット(N = 306)を用いたところ、一般化線型モデルにより、静脈栄養剤中の脂質含有には3.3%のばらつきがあり、これはグルコース濃度(5.8%)、微生物種(35.3%)および微生物と注入剤の相互作用(4.4%)より小さいことが示された。マッチさせたデータセット(N = 38ペア)を用いたところ、静脈栄養剤中の脂質含有には5.4%のばらつきがあり(P = 0.076)、これはグルコース濃度(8.5%、P = 0.025)、微生物種(75.5%、P < 0.001)および微生物と注入剤の相互作用(13.3%、P = 0.382)より小さいことが示された。マッチさせたデータセットについてメタアナリシスを行ったところ、グルコース濃度が一定の静脈栄養剤中における脂質の存在は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(P = 0.352)、大腸菌(Escherichia coli)(P = 0.025)または表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)(P = 0.494)の増殖率を有意に上昇させなかった(全体でP = 0.175)。
結論
静脈栄養剤中の脂質含有は、静脈栄養剤中の微生物増殖に影響を及ぼし得る複数の因子の1つにすぎなかった。単一容器からの静脈栄養剤注入の期間に関する推奨を行う場合は、これらすべての因子を考慮に入れるべきであり、また静脈栄養剤を汚染する可能性のある微生物種によって重み付けを行うべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
従来から指摘され各ガイドライン上でも勧告文が設定されているが、微生物にとっての栄養源は脂質成分だけではない。輸液剤の内容はもとより、輸液に使用されたラインの管腔内のその後の微生物汚染と菌の増殖もセットで考慮すべき点であると考えられる。

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