滑り止め付きソックス:病院内での多剤耐性病原体伝播のリザーバである可能性?★
Non-slip socks: a potential reservoir for transmitting multidrug-resistant organisms in hospitals?
N. Mahida*, T. Boswell
*Nottingham University Hospitals NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2016) 94, 273-275
滑り止め付きソックスは、病院内で転倒を防止するためその使用が増えている。患者は滑り止め付きソックスを使用し病院の様々な場所へ歩いて行き、ベッドの中でも着用する。ソックス 54 足と環境中の床サンプル 35 個を 3 次紹介病院の 7 病棟から入手した。バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci;VRE)がソックス 46 足(85%)から検出され、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)が 5 足(9%)から検出された。環境微生物調査により、床サンプル 24 個(69%)から VRE が、床サンプル 6 個(17%)から MRSA が培養された。クロストリジウム・ディフシル(Clostridium difficile)はいずれのサンプルからも検出されなかった。滑り止め付きソックスは、多剤耐性病原体により汚染される可能性があり、交差伝播の経路となる可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
入院患者における転倒は重要な問題であり、高齢者ではその頻度が 65 歳以上の 30%、80 歳以上の 50%が年 1 回以上発生するとされている。英国の病院では、「不適切な靴等の下足」による転倒防止の為に、綿製・ポリエステル製で滑り止め加工された「ノンスリップ靴下」を下足の代用として導入している施設がある。しかしながら、これを履いたままでトイレ、レストラン、放射線部門などの病院内を移動し、時にはベッドの中まで履いている。また、この靴下は単回使用ではあるが、長ければ数日から数週間継続使用されている。本論文では、その靴下の底の汚染状況をチェックし、VRE と MRSA が高頻度で検出されており、靴下を介した院内伝播の危険性を報告している。
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