整形外科手術中に発生する飛沫から外科医を守る手術用ヘルメットシステムの in-vitro 評価★

2016.09.26

In-vitro evaluation of surgical helmet systems for protecting surgeons from droplets generated during orthopaedic procedures


R. Wendlandt*, M. Thomas, B. Kienast, A.P. Schulz
*University Medical Center Schleswig-Holstein, Germany
Journal of Hospital Infection (2016) 94, 75-79
背景
手術室および手術着は手術部位感染症から患者を守るようデザインされている。しかし、手術チームには眼や皮膚粘膜の曝露を介した血液由来病原体による感染リスクが依然としてある。従来の術衣においても汚染に対してはある程度の防護が得られるが、手術用ヘルメットシステムは、外科医と手術を行っている術野との間に粒子、エアロゾル、液体に対するバリアをつくることで高レベルの防護を得ることを意図している。
目的
本研究の目的は、人工股関節全置換術および人工膝関節全置換術の in-vitro シミュレーションを実施し、整形外科手術中の飛沫による外科医の汚染を手術用ヘルメットシステム着用と従来の術衣着用とで比較することであった。
方法
人工股関節全置換術および人工膝関節全置換術は、マーカー液で絶えず湿潤させた多孔質人工骨を用いて実施した。それぞれの手術で、被験者 10 例が従来の術衣または手術用ヘルメットシステムと一体化した上着を着用して実施した。手術のシミュレーション後、紫外線照明下で被験者の写真を撮影した。術衣すべてを着用中および術衣を脱いだ後の画像を、染みのついた部分に関して評価した。
結果
従来の術衣着用中の汚染リスクは 30%であった。手術用ヘルメットシステムを用いた被験者 20 例(各手術 10 例ずつ)のいずれにおいても、防護衣を脱いだ後に染みは検出されなかった。
結論
本研究は、手術用ヘルメットシステムの防護特性は従来の術衣より優れていることを示している。高リスクの手術時に手術用ヘルメットシステムを用いることで、外科医の血液媒介感染への職業曝露を減少させることが可能である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
股関節や膝関節の人工関節置換術時の術後感染については、これまで多大な努力が払われ、一定の結果を得ることができている。針刺し・切創は職業感染の重大な関心事であるが、術者への血液体液飛散についてはあまり顧みられていない現状がある。本実験においては、血液体液の疑似物質として蛍光色素を用い、手術シミュレーションを実施した結果、ヘルメットシステムを導入することでほぼゼロにすることできることが証明された。

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