病院廃水中のカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE):臨床分離株に相関しないリザーバ

2016.06.23

Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae in hospital wastewater: a reservoir that may be unrelated to clinical isolates


L. White*, K.L. Hopkins, D. Meunier, C.L. Perry, R. Pike, P. Wilkinson, R.W. Pickup, J. Cheesbrough, N. Woodford
*Royal Preston Hospital, Lancashire Teaching Hospitals NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 145-151
背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)は、世界中の病院で感染制御上の新たな問題となっている。保菌者を同定することは、拡散および感染可能性を低下させる一助となり得る。
目的
地域的な CPE 流行の問題が認められない病院において、病院廃水の CPE 検査が感染予防目的の患者ごとのスクリーニングを補完しうるかどうかを検討すること。
方法
2014 年 2 月から 3 月に病院配管から廃水を 16 回採取し、chromID® CARBA 寒天培地および chromID® CPS 寒天培地と 10 μg エルタペネムディスクおよびコンビネーションディスク検査により CPE スクリーニングを行った。最小発育阻止濃度は British Society for Antimicrobial Chemotherapy の方法により決定し、カルバペネマーゼ遺伝子は PCR 法または全ゲノムシークエンシングにより検出した。一部の分離株をパルスフィールド・ゲル電気泳動によりタイピングした。
結果
廃水サンプル 16 件すべてから疑わしい CPE が回収された。Antimicrobial Resistance and Healthcare Associated Infection Reference Unit に送付した分離株 17 株中 6 株(シトロバクター・フレウンディー[Citrobacter freundii]4 株、エンテロバクター・クロアカエ[Enterobacter cloacae]菌群 2 株)は New Delhi メタロ-β-ラクタマーゼ(NDM)産生株、残りの 11 株(クレブシエラ・オキシトカ[Klebsiella oxytoca]6 株、E. cloacae 菌群 5 株)は Guiana-Extended-Spectrum-5(GES-5)産生株であり、英国では腸内細菌科細菌で報告された最初のものである。NDM 産生 C. freundii 株 4 株、NDM 産生 E. cloacae 菌群 2 株、GES-5 産生 E. cloacae 菌群 5 株中 4 株は、互いに区別できない同一の分離株 3 株であるのに対し、GES-5 産生 K. oxytoca 株 6 株は全体として 79%の相同性を示した。
結論
CPE は、簡便な培養法により病院廃水から容易に分離される。未検出の保菌者が廃水中にCPE を排出しているか、またはこれらの CPE が他のソースから配管に定着したことを示すかのいずれかである。病院廃水の CPE サーベイランスは急性期病院の感染制御目的には役立たないと考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
ユニークな発想によるサーベイランスだが、残念ながら、実用性はなかった。とはいえ、ネガティブな結果であってもきちんと論文にするのは、とても大切なことだと思われる。

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