感染予防対策の的を絞るための黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症強化サーベイランス★★
Enhanced surveillance of Staphylococcus aureus bacteraemia to identify targets for infection prevention
A.K. Morris*, C.D. Russell
*Victoria Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 169-174
背景
スコットランドにおける黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症(SAB)サーベイランスは、100,000 急性期のべ病床利用日あたりの感染件数およびメチシリン感受性に限られている。
目的
感染予防対策の的を絞るための強化 SAB サーベイランスの価値を示すこと。
方法
スコットランドの単独の衛生局において 5 年間に SAB と確認されたすべての患者を対象とする前向きコホート研究。すべての患者について 1 名の微生物学者が臨床データの調査を行った。
結果
全体で、SAB 事象 556 件が確認された:病院感染 261 件(46.6%)、医療関連感染 209 件(37.9%)、市中感染 80 件(14.4%)。6 件(1.1%)は感染源が病院感染ではなかったが、医療関連感染にも市中感染にも分類されないものであった。これらは非病院感染と分類した。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)菌血症は、病院感染および医療関連感染と関連していた。また、30 日死亡率は、市中感染 SAB(8.7%)と比べて、病院感染(31.4%)および医療関連感染(16.3%)で有意に高かった。血管アクセス装置は病院感染 SAB と関連しており、これらの多くで末梢静脈カニューレが感染源であった(43.9%)。市中感染は、静注薬物乱用、呼吸器感染、骨格関節感染と関連していた。皮膚軟組織感染は医療関連感染により広く認められた。
結論
データから、感染源および菌血症の原因別の強化 SAB サーベイランスは感染予防、経験的抗菌薬投与、衛生改善の各介入に影響を及ぼすことが示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
黄色ブドウ球菌は、血流を介して(菌血症)拡がり、心内膜炎、人工関節感染、脊椎の骨髄炎など播種性の感染巣を作り、その予後も決して良くない。英国では黄色ブドウ球菌菌血症数の報告が義務づけられているが、患者の臨床的背景などの詳細な報告はなされていないため、菌血症症例の減少のための感染予防対策の的が絞れていない。本論文では、臨床データから患者情報を収集する強化サーベイランスを実施し、病院感染における黄色ブドウ球菌菌血症の大半が末梢静脈の血管留置カテーテル由来であることが判明し、感染予防対策の的が明らかとなった。血管留置カテーテル関連菌血症のサーベイランスの重要性を再認識させる論文である。
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