臨床環境および調剤環境で無菌的に調製された経静脈投与薬剤の微生物汚染リスクのシステマティックレビューおよびメタアナリシス:最新情報

2015.12.31

Systematic review and meta-analysis of the risk of microbial contamination of parenteral doses prepared under aseptic techniques in clinical and pharmaceutical environments: an update


P.D. Austin*, K.S. Hand, M. Elia
*University of Southampton, UK
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 306-318
背景
微生物に汚染された経静脈投与薬剤の投与が感染性疾患や死亡をもたらす可能性がある。
目的
経静脈投与薬剤の無菌的調製または無菌製剤への添加剤の混和は、専用の調剤環境で行うほうが、臨床環境で行う場合と比較して投与剤の微生物汚染リスクが低いかどうかを調べること。
方法
システマティックレビューにより特定したデータをランダム効果のメタアナリシスにより評価し、投与剤の汚染頻度を t 検定を用いて比較した。
結果
34 件の研究(33 報)から 16,552 件の投与剤を特定した。全データを統合すると、投与剤の汚染頻度は臨床環境のほうが調剤環境で調製するよりも有意に高かった(3.7%[95%信頼区間(CI)2.2% ~ 6.2%、10,272 件の投与剤]対 0.5%[95%CI 0.1% ~ 1.6%、6,280 件の投与剤]、P = 0.007)。調剤環境での投与剤の汚染頻度は、個別のロットでの調製のほうがまとめて調製する場合よりも有意に高かった(2.1%[95%CI 0.7% ~ 5.8%、168 件の投与剤]対 0.2%[95%CI 0.1% ~ 0.9%、6,112 件の投与剤]、P = 0.002)。無菌経静脈投与薬剤への添加剤の混和は、臨床環境で行うほうが投与剤の汚染頻度が有意に高かった(リスク比 2.121[95%CI 1.093 ~ 4.114]、P = 0.026)。研究の全般的な質は低いと判定された。
結論
報告されている経静脈投与薬剤の汚染率は、許容される参照基準よりも大幅に高かったことから、感染リスクは高い可能性がある。汚染率に関する限定的なエビデンスからは、投与剤の調製は臨床環境よりも調剤環境で行うことが支持され、まとめての調製を臨床環境で行うことは支持されない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
病棟での注射調製は薬剤部の調製室での調製と比較すると汚染率が高いのは明らかであるが、病棟調製をゼロにすることが容易ではない現状を考えると、その中でより安全な調製のための対策を検討するのが現実的であろう。本レビューの結果は、病棟での混合調製のリスクを明確にしているが、一方、1972 年から 2013 年までの論文が対象となっており、40 年前の無菌調製の状況と現在の状況を混ぜた比較であることが結果に影響しているのでは、と気にかかった。研究の質が低いことについては、このテーマで行われるほとんどの論文は観察研究であるため、ランダム化して行うことは現実には難しいこと、サンプルサイズが小さいことは仕方がないのでは、と思われた。

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