手術を受ける小児において低栄養は感染性合併症の予後因子か?システマティックレビュー

2016.05.23

Is undernutrition prognostic of infection complications in children undergoing surgery? A systematic review


R. Hill*, S. Paulus, P. Dey, M.A. Hurley, B. Carter
*Alder Hey Children’s NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 12-21
背景
医療関連感染症は費用がかかり、ますますケアの質の指標と見なされるようになっている。感染症を低減しようとする戦略が幅広く行われるようになっているが、術後の小児での感染性合併症の発症における低栄養の役割を公式に調べた研究はほとんどない。
目的
文献のシステマティックレビューを実施して、低栄養が小児における術後の感染性合併症の予後因子であるかどうかを明らかにすること。
方法
書籍および研究の電子データベースを、1950 年から 2014 年の期間について検索した。組み入れ基準は、小児(年齢18 歳未満)を対象として、術前の栄養状態を評価し、術後の感染性合併症を報告している研究とした。2 人のレビュアーが質の評価を独立して行い、不一致があった場合は 3 人目のレビュアーが解決した。大部分の研究で、エビデンスの質は低いと判定された。
結果
10 件のコホートと 2 報の症例対照研究が組み入れ基準を満たした。5 報の研究は複数の感染性合併症を組み合わせた転帰を報告しており、残りの研究は個々の感染性合併症を報告していた。6 報の研究は、手術部位感染症(SSI)を単独で、または他の感染性合併症と組み合わせて報告していた。研究間の直接比較は、臨床的および診断上の不均一性のために困難であった。未補正(患者変数および臨床変数について)の解析では、低栄養と感染性合併症の関係が示唆された。他の変数を補正した研究においては、解析結果で SSI について有意性は維持されなかった。
結論
低栄養が小児における術後の感染性合併症の予測因子である可能性について、SSI を除いて、質の低いエビデンスが認められた。しかし、栄養状態および転帰の評価に一貫性がなかったため、結論を導き出すことは難しかった。予後予測上の関係の可能性についてさらに検討するには、より規模の大きな質の高い研究が必要とされる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
高度医療を提供している英国において、低栄養の小児と栄養状態の良い小児の両者を、大規模研究として正当に評価して検討を加えることが難しいだろう。年齢や、疾患など背景因子も加えて大規模調査をするとなると、成人の検討のようにはなかなかデータが集まらないかもしれない。

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