2006年から2013年の韓国の集中治療室におけるデバイス関連感染症起因病原体の分布および抗菌薬感受性の傾向:Korean Nosocomial Infections Surveillance System(KONIS)の結果
Trends in the distribution and antimicrobial susceptibility of causative pathogens of device-associated infection in Korean intensive care units from 2006 to 2013: results from the Korean Nosocomial Infections Surveillance System (KONIS)
J.Y. Choi*, Y.G. Kwak, H. Yoo, S.-O. Lee, H.B. Kim, S.H. Han, H.J. Choi, H.Y. Kim, S.R. Kim, T.H. Kim, H. Lee, H.K. Chun, J.-S. Kim, B.W. Eun, D.W. Kim, H.-S. Koo, E.-H. Cho, K. Lee, Korean Nosocomial Infections Surveillance System (KONIS)
*Yonsei University College of Medicine, South Korea
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 363-371
背景
すべての国にとって、医療関連感染起因病原体に関する情報は、適切な院内感染防止・対処戦略を立てるうえで重要である。
目的
2006 年 7 月から 2014 年 6 月までの韓国の集中治療室(ICU)におけるデバイス関連感染症起因病原体の頻度および抗菌薬耐性の変化を評価すること。
方法
ICUにおける3種類の主要なデバイス関連感染症を含む、Korean Nosocomial Infections Surveillance System(KONIS)データを解析した。
結果
グラム陰性菌の頻度は、中心ライン関連血流感染(CLABSI)および人工呼吸器関連肺炎(VAP)で緩やかに増加した(CLABSI で 24.6%から 32.6%、VAP で 52.8%から 73.5%)。一方、グラム陽性菌の頻度は、CLABSI で 58.6%から 49.2%に、VAP で 44.3%から 23.8%に減少した(P < 0.001)。CLABSI では、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が調査期間を通してもっとも多くみられた起因病原体であったが、VAP では、2010 年の時点でアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)に入れ替わった。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)は、カテーテル関連尿路感染でもっとも多くみられた病原体であった。黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率は 95%から 90.2%に低下し(P < 0.001)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)と大腸菌(Escherichia coli)のアミカシン耐性率はそれぞれ43.8%から 14.7%、15.0%から 1.8%に低下した(P < 0.001)が、アシネトバクター・バウマニーのイミペネム耐性率は 52.9%から 89.8%に上昇した(P < 0.001)。
結論
CLABSI および VAP では、院内感染起因病原体としてのグラム陰性菌の割合が上昇した。韓国の ICU ではデバイス関連感染症を引き起こすアシネトバクター・バウマニーの発生率が急速に上昇し、これらの菌のカルバペネム耐性率も同様に上昇していた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
韓国における医療関連感染の原因菌の薬剤耐性に関する論文である。黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率が 90.2%(それでも減ったというのだから!)、アシネトバクターのイミペネム耐性率が 89.9%(!)といずれも非常に高率であることに驚かされる。エボラ、ジカ熱、MERS など海外で流行している新興再興感染症は様々であるが、海外の医療施設に入所・入院していた患者では、あらためて耐性菌感染症に注意が必要であることを再認識させてくれる論文である。
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