スコットランド国民保健サービス(NHS)委員会の介護施設および独立介護施設におけるノロウイルスアウトブレイク中の面会一時中止:実践の横断研究
Temporary suspension of visiting during norovirus outbreaks in NHS Boards and the independent care home sector in Scotland: a cross-sectional survey of practice
K. Currie*, E. Curran, E. Strachan, D. Bunyan, L. Price
*Glasgow Caledonian University, UK
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 253-258
背景
ノロウイルスアウトブレイクは、患者の多大な苦痛の原因となり、保健サービス提供に悪影響を与える。アウトブレイク管理対策には、患者/スタッフの移動を規制することや面会者に感染リスクについて助言することなどがある。なかには面会一時中止を提唱する者もいる。面会一時中止の実施に影響を与える因子はこれまでに報告されていない。
目的
ノロウイルスアウトブレイク中の面会一時中止に関するスコットランドでの現在の実践を記述すること。
方法
スコットランド保健委員会(国民保健サービス[NHS])感染予防担当者(22名)と独立介護施設マネージャー(107名)の横断研究。
結果
面会一時中止の実態は、施設により様々であった。NHS の知見は以下の通りであった。86.4%が最近のノロウイルスアウトブレイクを報告しているが、36.4%のみが面会一時中止決定の指針となる基準が整っていると報告した。アウトブレイクを経験した施設のうち 57.9%のみが面会一時中止を実施した。一方、独立介護施設回答者の 77.6%は、面会一時中止基準が整っており、これまでにアウトブレイクを経験した 70.1%の施設ではすべて、通常、面会者を差し止めると報告した。NHS(81.8%)および独立介護施設(84.2%)両方の回答者の大多数が、個別のケースに例外を認めると報告した。実践にはばらつきがあるが、NHS 回答者の 75%、独立介護施設回答者の 81.8%がアウトブレイクの制御に面会一時中止が有用であることに同意した。面会一時中止の実施決定に影響する因子としては、個別のケースにおける判断、伝播に果たす面会者の役割というエビデンスに対する認識不足、面会者を迎えることは患者の権利であるという信念が含まれていた。
結論
スコットランドにおける面会一時中止の実施は施設により様々であり、基準の有無、個人の信念、専門家としての判断にばらつきがある。方針策定には、ノロウイルスの伝播における面会者の関与とサービス利用者による面会一時中止の受け入れに関するさらなる研究が求められる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
2011 年に米国医療疫学学会(SHEA)が発出したノロウイルスによる胃腸炎のアウトブレイクの予防と管理のガイドラインでは訪問者に関する方針を策定することが推奨されているが、制限が推奨されるのは施設内の利用者の移動であり、施設外からの面会者の制限については言及されていない。ノロウイルスの持ち込み防止や、施設内での水平伝播の防止など、面会一時中止は一定の効果を有すると想定されるが、実際には患者の権利などの観点から実施が困難である、といった結果であった。わが国でも面会一時中止は多くの施設で一度は検討される感染防止策の一つと考えられるが、その有効性について検討が必要であろう。
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