院内肺炎の診断と特徴:後向きコホート研究

2016.03.01

Diagnosis and features of hospital-acquired pneumonia: a retrospective cohort study


C.D. Russell*, O. Koch, I.F. Laurenson, D.T. O’Shea, R. Sutherland, C.L. Mackintosh
*Western General Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 273-279
背景
院内肺炎は、入院後 48 時間以上経過してから非挿管患者に発症する放射線学的検査により確認される肺炎と定義される。経験的治療レジメンには広域スペクトル抗菌薬が用いられる。
目的
院内肺炎診断の正確性を評価し、院内肺炎患者の患者背景因子および微生物学的特徴を明らかにすること。
方法
2013 年 4 月から 2014 年 4月に英国の第 3 次病院で院内肺炎の臨床診断に対して抗菌薬の静脈内投与を受けた内科および外科の入院患者を同定した。患者背景および臨床的詳細を記録した。
結果
院内肺炎と臨床診断された成人患者計 166 例が認められた。広域スペクトル抗菌薬が処方されており、主なものはピペラシリン・タゾバクタム(57.2%)およびアモキシシリン・クラブラン酸(12.5%)であった。24.7%の患者から培養用の痰が得られた。65%の患者は、院内肺炎治療時に新たな/進行性の浸潤が放射線学的に認められたことから院内肺炎の診断基準(2005 American Thoracic Society/Infectious Diseases Society of Americaガイドライン)を満たした。放射線学的検査により確認される院内肺炎は、炎症マーカー高値および痰培養陽性と有意な関連性があった。また、手術の既往および/または気管内挿管は、放射線学的検査により確認される院内肺炎と有意な関連性が認められた。放射線学的検査により確認された院内肺炎患者の痰検体 35件中 17 件から病原菌が同定された。これらの菌はグラム陰性桿菌(11例)または黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(6例)であった。グラム陰性桿菌はアモキシシリン・クラブラン酸耐性であるがシプロフロキサシン、ピペラシリン・タゾバクタムおよびメロペネムに感受性である傾向を示した。黄色ブドウ球菌分離株 6 株中 5 株はメチシリン感受性であり、いずれの株もドキシサイクリン感受性であった。
結論
病棟レベルの病院業務において、「院内肺炎」は、客観的放射線学的基準を適用した場合、35%の症例で使われ過ぎる診断であり、不正確である可能性がある。放射線学的検査により確認される院内肺炎は、明確な臨床的および微生物学的な徴候を示す。予防的介入の標的となる可能性のあるリスク因子候補が同定された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
院内肺炎と診断された 3分の1 で放射線学的に肺炎像が認めれていないことは、肺炎以外の感染症あるいは非感染性イベントの可能性と同時に、胸部 XP では適確に肺炎像が捉えられていない可能性も考慮すべきある。CT 上で肺炎と診断された患者の 43.5%にしか、胸部 XP で浸潤影が認められなかったとの報告もある(Am J Emerg Med 2013;31:401-405.)。また、MRSA や耐性傾向のグラム陰性菌を考えると、CVA/AMPC による治療は失敗の可能性があるが、本論文では治療効果については記載されておらず不明である。同定された院内肺炎のリスク因子は外科手術後と気管内挿管であり、これらの患者に対しては予防的介入としてクロルヘキシジン・グルコン酸塩による口腔ケアを考慮する必要があろう。

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