医療関連メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の 2 つのメジャーなクローンは、異なった疫学的特徴を有する
Differing epidemiology of two major healthcare-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus clones
C.J. Jeremiah*, J.P. Kandiah, D.W. Spelman, P.M. Giffard, G.W. Coombs, A.W. Jenney, S.Y. Tong
*St Vincent’s Hospital, Fitzroy, Australia
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 183-190
背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)のクローンである ST(sequence type)22 と ST239 は、世界中に広まることに成功している。オーストラリア全体では、医療関連 MRSA の主要な型として ST22 が ST239 に置き換わった。この変化の根底にある理由を理解するために、オーストラリア・メルボルンの 3 次病院で分離されたST22 MRSAと ST239 MRSAについて、それらの疫学と臨床的特徴を比較した。
方法
6 か月以上にわたり、Alfred Health Pathology(AHP)に提出された検体から連続的に臨床データとともに MRSA 分離株を収集した。分離株は、Multilocus sequence typing(MLST:複数部位塩基配列タイピング)に基づく高解像度融解曲線解析法により遺伝子型を決定した。
結果
AHP で分離された 1,079 株の黄色ブドウ球菌のうち、328 株(30%)が MRSA であった。この中で313 株の遺伝子型が決定できた。78 株(25%)が clonal complex(CC)22(ST22 を表す)、142 株(45%)が CC239(ST239 を表す)であった。多くみられたのは、皮膚軟部組織感染症、呼吸器感染症、骨関節感染症であった。多変量ロジスティック回帰分析では、CC239 と比べ、CC22 は、年長の患者(各年の増加について補正オッズ比[aOR]1.04、95%信頼区間[CI]1.02 ~ 1.07)、亜急性期病院の患者(aOR 2.7、95% CI 1.2 ~ 5.8)または長期ケア施設(LTCF)の患者(aOR 5.5、95%CI 2.0 ~ 14.5)と関連していた。患者入院から MRSA 分離までの期間の中央値は、CC239 では 9 日、CC22 では 1 日(P < 0.01)であった。MRSA 株の疫学は病院部門によって異なっていた。
結論
MRSA の CC22 と CC239 は異なるニッチ(生態的地位)を有している。CC22 は LTCF入所中の高齢者と、CC239 は院内の獲得と関連していた。継続して MRSA の制御を達成するためには、LTCF とその入居者を含めた感染制御戦略が求められるようである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
オーストラリアでは、MRSA の疫学が、医療機関、地域、国いずれのレベルにおいても変化してきており、全体としての分離率の低下に加えて、ST239 が減少し、ST22 が相対的に増加している。本検討の結果からは、特に亜急性期病院や LTCF で CC22(ST22)が増加し、それが急性期病院に持ち込まれる一方で、ST239 が ICU や呼吸器病棟を中心に問題となっている状況が読み取れる。なお ST22 はSCC mec IV型、ST239 SCC mec III型の特徴を持つ。
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