レバノンの集中治療室における超多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii):獲得のリスク因子と colonization スコアの検討

2016.01.31

Extensively drug-resistant Acinetobacter baumannii in a Lebanese intensive care unit: risk factors for acquisition and determination of a colonization score


R. Moghnieh*, L. Siblani, D. Ghadban, H. El Mchad, R. Zeineddine, D. Abdallah, F. Ziade, L. Sinno, O. Kiwan, F. Kerbaj, Z. El Imad
*Ain WaZein Hospital, Lebanon
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 47-53
背景
アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)(AB)は、世界的な病院アウトブレイクを引き起こす重大な院内感染起因病原体として現れ、超多剤耐性(XDR)菌の原型となっている。
目的
レバノンの 3 次医療施設にある集中治療室(ICU)において、間欠的アウトブレイクを引き起こしたXDR-AB の患者を対象として、XDR-AB 獲得のリスク因子を同定すること、また保菌リスクのスコアを作成すること。
方法
この後向き研究は、2012 年 7 月から 2013 年 7 月に 7 床の ICU に入院したベースラインの XDR-AB スクリーニング培養陰性の患者 257 例を対象とした。当院の電子的医療記録から、患者の人口統計学的データおよび臨床的特徴を収集した。潜在的リスク因子の単変量解析、次いで多変量解析を実施し、保菌リスクスコアに含められるべき項目を検討した。
結果
XDR-AB 獲得率は 15.6%であった。多変量解析により特定された colonization スコアに含めるべき因子は、尿路カテーテル留置 > 6 日(オッズ比[OR]16.98、95%信頼区間[CI]3.96 ~ 49.56、P < 0.0001)、ICU contact pressure(保菌患者との接触があった患者数と接触日数の積) > 4日(OR 2.38、CI 1.48 ~ 3.57、P = 0.001)、胃瘻チューブの留置(OR 5.44、CI 1.43 ~ 20.68、P = 0.013)、カルバペネムまたはピペラシリン・タゾバクタムを使用歴(OR 4.20、CI 1.65 ~ 11.81、P = 0.002)であった。XDR-AB 獲得リスクは、スコア 0、1、2、3、4 でそれぞれ 0%、5.6%、17.2%、56.8%、80%であった。スコア 4 は、XDR-AB 獲得の可能性が高いことを示しており、患者の隔離が必要であることを示唆し、スコア 0 は XDR-AB 獲得の可能性が低いことを示す。
結論
XDR-AB の拡散を制限するために隔離が必要な患者を判断するためのスコアの開発のためにリスク因子が使用できると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
研究の舞台はレバノンのある病院の 7 床のベッドで約 13 か月の間に入室した 257 例のうち約 6 分の 1 にあたる 40 例が ICU で XDR-AB を獲得したことについての危険因子の検討である。胃瘻チューブや尿路カテーテル、広域抗菌薬の使用がリスク因子だという結果であった。研究デザインとしては問題ないのかもしれないが、標準予防策や接触予防策はきちんと守られていたのだろうか。この ICU に入室すること自体がリスク因子のように思われる。

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