カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE):アウトブレイクのマネジメントを目的とした検出患者および接触者の積極的な登録制度の採用★
Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae: use of a dynamic registry of cases and contacts for outbreak management
B. Clarivet*, A. Pantel, M. Morvan, H. Jean Pierre, S. Parer, E. Jumas-Bilak, A. Lotthé
*University Hospital of Montpellier, France
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 73-77
背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)の出現および拡散が公衆衛生上非常に大きな問題となっている。CPE 感染の制御・予防は、保菌者の隔離と接触者の積極的スクリーニング、フォローアップにかかっている。
目的
アウトブレイクのマネジメント、長期的なデータ収集、疫学調査を目的とし、検出患者および接触者のオープン登録を実施すること。
方法
入院中に CPE 培養で陽性を示し、感染または保菌と判断した検出患者すべてと、接触者(すなわち CPE 検出患者と同一の医療チームによりケアを受けた者)を順次、データベースに登録した。新規に入院した場合は病院間で情報が相互に参照され、さらに疫学的な関連(すなわち共通の接触者)の有無も調査が行われた。3 回のスクリーニングにより陰性が確認されていない検出患者と接触者は、アクティブリスト(active list)に登録した。
結果
2012 年 10 月から 2014 年 11 月までに、30 例の検出患者と 1,268 例の接触者を登録した。うち 24 例の接触者は 2 例または 3 例の検出患者と関連があった。接触者のうち直腸スワブで 3 回陰性が確認できたのは 6.5%のみであり、依然として 1,145 例がアクティブリストに残ったままであった。CPE のアウトブレイクが9 か月の間隔をおいて 2 回発生した(それぞれ 12 症例および 9 症例)。本登録を用いた入院の相互参照により、一見したところ関係のない CPE 陽性患者間の疫学的関連が明らかになり、伝播の環境要因が示唆され、この要因はその後立証された。
結論
我々は CPE エピソードを管理するためのシンプルかつ多目的なツールを採用し、疫学的関連を調査した。隠れた感染源の可能性がある接触患者のスクリーニングを改善する努力が必要である。地域的登録が有用であるかもしれない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
CPE は腸内に常在菌叢の一部として存在しうるため、気づかない間の保菌がさらなる伝播を生じてしまう。しばしば疫学的関連を証明することは難しく、これはますます感染対策を難しくする。本検討のように、病院をまたいだ情報の共有は、伝播経路の特定と遮断に有効であろう。地域での感染対策とどのように組み合わせていくかも重要であり、我が国も同様の課題を抱えているといえる。
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