ノロウイルスアウトブレイクの分析により判明した適時かつ広範な微生物学的検査の必要性★

2015.12.31

Analysis of norovirus outbreaks reveals the need for timely and extended microbiological testing


F. Mattner*, A. Guyot, C. Henke-Gendo
*Hospital of the City of Cologne, Germany
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 332-337
背景
病院でのノロウイルスアウトブレイクは、近年、予防のための多くの推奨が発表されているにもかかわらず、依然として大きな脅威である。
目的
病院でのノロウイルスアウトブレイク発生に寄与する因子を解析し、新たな予防選択肢を明らかにすること。
方法
ドイツの病院 5 施設で 2002 年から 2012 年に発生した 71 件のノロウイルスアウトブレイクのデータを、開始時の下記の状況に焦点を当てて解析した。アウトブレイクが発生した曜日、症状を呈する患者が最初に認められてからアウトブレイク発生日までの期間、アウトブレイク時にノロウイルス検査で陽性結果が得られたタイミング、およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の併存。
結果
アウトブレイク 68 件(96%)で初発症例の特定が可能であった。初発症例が 1 例であったアウトブレイクは 44 件であり、このうち 30 件(68%)の初発症例は病院でノロウイルスを獲得していた。全アウトブレイクの 20%では、初発症例は病院職員であった。アウトブレイク 9 件は、患者が症状を有する患者へ曝露した後に、接触患者を潜伏期間中に隔離しなかったことが原因となっていた。ノロウイルスアウトブレイクの患者数は、アウトブレイク発生前にノロウイルス検査結果が得られていた場合に、より少数であった(P = 0.028)。C. difficile 感染症のデータが入手可能であったノロウイルスアウトブレイク 46 件中 30 件(64%)では、最大 10 例の C. difficile 毒素検査陽性患者が認められた。同一患者におけるノロウイルスと C. difficile の同時感染または逐次的感染は、アウトブレイク 9 件(20%)で発生していた。
結論
今後の予防戦略では、患者のみならず病院職員にも焦点を当てるべきである。アウトブレイクの制御には、新規下痢・嘔吐患者を対象とした持続的なサーベイランスと、すべての曝露患者に対する接触予防策の適時の適用が極めて重要であるとともに、広範な微生物学的検査が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
この論文では、ノロウイルス感染症アウトブレイクを「同一の病棟で、最初の発症者が出た後、少なくともさらに 2 例以上の入院患者が症状を呈し、そのうちの 1 名がテストで陽性を示すこと」と定義していた。初発症例の発症日からアウトブレイクの発生日までは中央値で 2 日、範囲はゼロ ~ 23 日となっており、症状が改善した後も便中にウイルスが排泄されることが原因なのだろうか、と気にかかった。なお、この初発症例の 20%は医療従事者であったことは他人事ではなく、体調不良時の対応についてのスタッフ教育の重要性を再確認させられた。

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