胃癌患者に対する術中腹腔内化学療法が臓器・体腔手術部位感染症に及ぼす影響

2015.11.30

Impact of intra-operative intraperitoneal chemotherapy on organ/space surgical site infection in patients with gastric cancer


X. Liu*, X. Duan, J. Xu, Q. Jin, F. Chen, P. Wang, Y. Yang, X. Tang
*Affiliated Tumor Hospital of Guangxi Medical University, China
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 237-243
背景
手術部位感染症(SSI)の種々のリスク因子として、年齢、過体重、手術時間、および失血量などが特定されている。胃癌患者に対する手術中の腹腔内化学療法は高い頻度で行われる処置であるが、SSI への影響についてはこれまで評価は行われていない。
目的
術中腹腔内化学療法は、胃癌患者の臓器・体腔 SSI の主要なリスク因子であるかどうかを評価すること。
方法
当院の消化器外科部門で 2008 年 1 月から 2013 年 12 月に手術を実施した胃癌患者全例を研究対象とした。臓器・体腔 SSI 発生率を、術中腹腔内化学療法を受けた患者と受けなかった患者で比較し、単変量および多変量回帰分析により臓器・体腔 SSI のリスク因子を評価した。臓器・体腔 SSI の原因菌の同定も実施した。
結果
適格患者 845 例中 356 例が術中腹腔内化学療法を受け、臓器・体腔 SSI 発生率はこれらの患者のほうが術中腹腔内化学療法を受けなかった患者と比較して高かった(9.01%対 3.88%、P = 0.002)。単変量解析により、この結果は有意であることが確認された(オッズ比 2.443、P = 0.003)。術中腹腔内化学療法を受けた患者では入院期間が延長した(平均 20.91 日[95%信頼区間(CI)19.76 ~ 22.06]対 29.72 日[95% CI 25.46 ~ 33.99]、P = 0.000)。本研究の結果から、術中腹腔内化学療法はグラム陰性菌感染症の増加と関連する可能性も示唆された。
結論
胃癌患者に対する術中腹腔内化学療法は、臓器・体腔 SSI の有意なリスク因子である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
進行胃癌に対する治療として術中の腹腔内温熱化学療法が試みられている。本論文は「腹腔内温熱化学療法を行った症例で SSI が多いような印象がある」ことをきっかけに行われた症例対照研究である。結果の重要性ももちろんであるが、日常臨床の疑問を研究成果としてアウトプットする見本としても参考になるだろう。

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