電子化医療データの自動編集により算出される病院感染による尿路感染症および血流感染症の発生率

2015.11.30

Incidence rates of hospital-acquired urinary tract and bloodstream infections generated by automated compilation of electronically available healthcare data


J.D. Redder*, R.A. Leth, J.K. Møller
*Lillebaelt Hospital, Denmark
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 231-236
背景
登録データの自動編集を利用した病院感染(HAI)のモニタリングによって、労力を要し、コストがかかり、さらにデータの主観的サンプリングやしばしば無作為サンプリングが発生するといった手作業のサーベイランスの欠点に対処できる可能性がある。
目的
HAI による尿路感染症(UTI)および血流感染症(BSI)の自動モニタリングシステムの評価を行うこと、およびデンマークの病院トラスト 1 施設における 5 年間の発生率を報告すること。
方法
主に微生物学的検査結果および抗菌薬処方に関連する電子的に利用可能なデータに基づいて、HAI による UTI および BSI の自動モニタリングの検証を実施し、2010 年から 2013 年の過去 6 回の点有病率調査のデータ、および 2010 年 1 月以降の内科の 1 部門での手作業による評価のデータ(HAI による UTI のみ)と比較した。2010 年から 2014 年の発生率(1,000 病床日当たりの感染件数)を算出した。
結果
自動モニタリングによる検出感度は、点有病率調査との比較で全UTIで 88%、HAI による UTIで 78%、および全 BSIで 100%であった。月別の発生率にはばらつきがみられ、HAI による UTI は 1,000 病床日当たり 4.14 件から 6.61 件、HAI による BSI は 1,000 病床日当たり 0.09 件から 1.25 件であった。
結論
点有病率調査を HAI の自動モニタリングに置き換えることによって、より良好かつ客観的なデータが入手可能であり、患者個別リスクの分析および疫学研究の有望な基礎となると考えられる。微生物学的所見、入院データ、および抗菌薬処方についての電子データベースを有する病院では、多くの場合に自動モニタリングが適用できると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
わが国ではサーベイランスはどこの病院でも悩みの種である。その最大の理由は「手間がかかる」ことに尽きる。わが国でもいくつかの感染管理プログラムが使用できるが極めて高額であることに加え、本研究のような評価が十分に行われていない。あらゆることが電子化されていく今日、そのデータを最大限に活用するために感染管理担当者からこのようなプログラムの開発に積極的にかかわっていく必要がある。その点で本研究の「評価方法」は参考になるのではないだろうか。

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