抗菌薬関連の投薬安全性インシデント:スコットランド西部の病院における地域的後向き研究★★

2015.11.30

Antimicrobial-related medication safety incidents: a regional retrospective study in West of Scotland hospitals


J.R. Covvey*, A. Al-Balushi, A.C. Boyter, Y. Gourlay
*Duquesne University, PA, USA
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 264-270
背景
投薬関連インシデントは、病院の医療における患者の安全を向上させるための重要な検討事項である。この集団では抗菌薬療法が広く行われるため、抗菌薬投与には過誤や有害なイベントが生じやすい。
目的
2 次ケア病院の地域グループでの抗菌薬関連のインシデント報告の特性を解析すること。
方法
2010 年 4 月から 2013 年 12 月の抗菌薬関連のインシデント報告を、1 地域内の National Health Service Scotland に属する病院から入手した。報告のフルセット解析、および患者に害または傷害をもたらしたインシデントのサブセット解析を実施するとともに、抗菌薬の安全性の標的とするべき領域をより明確にするため、病床利用日および 1 日規定用量で補正した多変量回帰によるサブセット解析を行った。
結果
全体で 1,345 件のインシデントが報告され、報告の粗発生率は 0.98 件/日(95%信頼区間[CI]0.93 ~ 1.03 件/日)であった。インシデントへの関与が多かった抗菌薬クラスは、ペニシリン系(371 件、27.6%)、アミノグリコシド系(358 件、26.6%)、およびグリコペプチド系(210 件、15.6%)であった。多くのインシデント(514 件、38.2%)は害または傷害との関連はなかったが、72 件(5.4%)は患者に害をもたらした。リハビリテーション/アセスメント部門(相対割合[relative rate;RR]2.61、95%CI 1.70 ~ 4.03)および女性/小児部門(RR 2.04、95%CI 1.39 ~ 2.99)は、他の部門と比較してインシデント報告率が高く、おそらくリスク患者集団であることが関連していると考えられた。インシデント報告のタイプ別では、投与/供給の問題にかかわるものが最も多かった(RR 2.07、95%CI 1.51 ~ 2.84)。
結論
抗菌薬関連のインシデント報告により、病院環境での質改善のためのいくつかの主要な領域が特定された。これらは安全への取り組みの指針となるものである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
抗菌薬関連のインシデントの発生率が高い薬剤はペニシリン系、アミノグリコシド系、グリコペプチド系薬であると、本論文では分析されている。ペニシリン系のインシデントが高いのは薬剤アレルギー関連であり、その割合は 4 割近くであったと説明されている。アミノグリコシド系、グリコペプチド系薬は投与設計が難しい薬剤であり、TDM(therapeutic drug monitoring)の実施などが関連していると思われるが、詳細なデータは示されていない。

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