イングランドの国民保健サービス(NHS)病院トラストにおけるエボラウイルス病への備えに関する横断研究

2015.09.30

Cross-sectional study of Ebola virus disease preparedness among National Health Service hospital trusts in England


T.C.S. Martin*, M.A. Chand, P. Bogue, A. Aryee, D. Mabey, S.D. Douthwaite, S. Reece, P. Stoller, N.M. Price
*Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 11-18
背景
最大規模のエボラウイルス病アウトブレイクが西アフリカで進行している。航空旅客データからは、アフリカ以外では英国がエボラウイルス病症例の流入リスクが最も高い国の 1 つであることが示唆される。そのためイングランドの病院は、エボラウイルス病の疑い例の評価および早期管理に備えるように指導を受けた。しかし、イングランド全域の病院の対応は明らかではない。
目的
イングランドの急性期病院の準備状況を評価するとともに、エボラウイルス病の疑い例への備えの際に経験した課題についいて述べること。
方法
イングランドのすべての急性期の国民保健サービス(NHS)病院トラスト(病院トラストは、1 つの地理的地域で 1 つまたは複数の NHS 病院を管理している)を対象とした、半構造化電話面接およびオンライン調査による横断研究。
結果
合計 112 の病院トラストが調査に回答した。面接を行ったすべての病院トラストが、エボラウイルス病の疑い例に備える活動に着手していると報告し、97%は疑い例の評価ができる状態にあると回答した。ほとんどの病院トラストが救急救命部門でのシナリオを考慮していた(97%)。しかし、産科部門(61%)および小児科部門(79%)に特化したシナリオ、換気サポートもしくは腎臓サポートの提供(75%)、または心肺停止時の蘇生法(56%)を考慮している病院トラストはそれよりも少なかった。34 の病院トラストがサンプル輸送に関して、カテゴリー A の病原体輸送の適時の実施には問題があると報告した。課題は、個人防護具の選択・使用法・調達(71%)、国内指針の解釈(62%)、リソース配分および疑い例の管理の支援(38%)などであった。
結論
イングランドの病院トラストによるエボラウイルス病への備えに関する取り組みは十全なものであった。その後の全国的指針では、本調査で明らかにされた課題のいくつかを取り上げているが、エボラウイルス病の疑い例に遭遇する急性期医療部門では、特に実務的な点で、さらなる改善の余地がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
英国では出血熱対策マニュアルがよく整備されている、また大型のテント式陰圧室を国が提供して稼働できる状況にある。しかし、いざというときの備えについては絶えず定期的な実地訓練が必要であろう。

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