フルオロキノロン制限(2007年から2012年)による腸内細菌科細菌の耐性への影響:分割時系列分析

2015.09.30

Effects of fluoroquinolone restriction (from 2007 to 2012) on resistance in Enterobacteriaceae: interrupted time-series analysis


J.B. Sarma*, B. Marshall, V. Cleeve, D. Tate, T. Oswald, S. Woolfrey
*Northumbria Healthcare NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 68-73
背景
抗菌薬管理(antimicrobial stewardship;ASP)は、医療関連感染症の減少のための取り組みにおける主要な要素である。
目的
フルオロキノロン制限の実施について述べるとともに、その腸内細菌科細菌の耐性への影響を、基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌(Escherichia coli)(これまでは、ほとんどがフルオロキノロン耐性である)の尿分離株を中心に解析すること。
方法
2009 年 4 月から 2012 年 3 月に、重複のない連続した尿サンプルから回収した ESBL 産生大腸菌の病院分離株および市中分離株を対象として、Poisson 分布モデルに基づく分割時系列分析を実施した。フルオロキノロン制限の前後の期間で比較を行った。2009 年から 2013 年のすべての腸内細菌科細菌の尿分離株(1 年当たり約 20,000 株)および大腸菌の血液培養分離株(約 350 株)についても、フルオロキノロン耐性の動向を分析した。
結果
ESBL 産生大腸菌の尿分離株のシプロフロキサシン耐性率の大幅な低下が、病院環境(リスク比[RR]0.473、95%信頼区間[CI]0.315 ~ 0.712)および市中環境(RR 0.098、95%CI 0.062 ~ 0.157)のいずれにおいても認められた。耐性率の低下は、すべての腸内細菌科細菌の尿分離株および大腸菌の血液培養分離株でもみられた。
結論
フルオロキノロンの 100 病床日当たりの使用量を 1 日規定用量で 2 以下にまで減少させることによって選択圧が十分に除去され、4 か月という短期間で、耐性腸内細菌科細菌、特に ESBL 産生大腸菌の英国流行株のフルオロキノロン感受性が回復したと結論される。これに伴って、全般的な ESBL 負荷の減少も同時にみられた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
フルオロキノロン系薬は静注よりも経口薬で使用されることが多いが、経口フルオロキノロン系薬に対する介入を行っている病院は日本では少ないだろう。
本論文はフルオロキノロン系薬の使用制限によってキノロン耐性のみならず、ESBL 産生大腸菌の分離率も減少したことを示している。また同じ号には同一著者によりフルオロキノロン系薬の使用制限による Clostridium difficile 感染症の減少が報告されている。これらの研究結果は日本における ASP の戦略に一石を投じるものといえよう。

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