中国・内モンゴル農村部の医療従事者の自己報告による手指衛生実践、ならびに擦式アルコール製剤の実施可能性と受容性

2015.08.31

Self-reported hand hygiene practices, and feasibility and acceptability of alcohol-based hand rubs among village healthcare workers in Inner Mongolia, China


Y. Li*, Y. Wang, D. Yan, C.Y. Rao
*Global Disease Detection Program, United States Centers for Disease Control and Prevention, China
Journal of Hospital Infection (2015) 90, 338-343
背景
手指衛生の遵守は、医療関連感染症のリスクを減少させるために極めて重要である。中国農村部の医療における手指衛生実践に関するデータはほとんどない。
目的
中国農村部の医療従事者について、擦式アルコール製剤による手指衛生の実施可能性と受容性、ならびにその手指衛生実践について評価すること。
方法
擦式アルコール製剤のボトル 500 本を、中国・内モンゴルの農村部の医療従事者に提供した。標準化した質問票を用いて、医療従事者の業務負荷、手指衛生設備の利用可能性および使用状況、ならびに手指衛生に関する知識、態度、実践に関する情報を収集した。
結果
合計 369 名(64.2%)の参加者が質問票に回答した。擦式アルコール製剤の提供を受けた参加者の 84.5%は擦式アルコール製剤を受け取ることによって自分らの手指衛生が改善すると考えていたが、78.8%は自費では 1.5 米ドル以上は支払うつもりはないと回答した(実際の費用は 4 米ドル)。患者に在宅医療を提供している回答者の大半(77.2%)は、自施設から擦式製剤を持ち出さないと回答した。自己申告による手指衛生遵守は全般的に不十分であり、最も遵守率が低かったのは「患者に接触する前」であった。擦式アルコール製剤の使用に関する不満として報告された上位 3 項目は、皮膚の刺激、飛沫、および不快な残存であった。臨床経験の少ない農村部の医師は手指衛生実践が少なかった。
結論
農村部の医療従事者における擦式アルコール製剤の受容性は、製剤が無料または低価格で提供される場合は全般的に高いが、手指衛生実践状況は全体として不十分であった。通常の医療施設外の環境での手指衛生に関する教育および研修が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本研究は、在宅診療に重きを置く中国農村部における、医療従事者の手指衛生遵守に関する調査結果を報告したものであり、現状を想起させる興味深い結果が得られている。本邦でも在宅診療に重点を置くべく、政策上の誘導が行われているが、在宅医療での感染対策にはまだ関心が低い状況といえる。本邦においても、在宅医療での手指衛生について調査と向上が進むことを期待したい。

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