バンコマイシン中等度耐性黄色ブドウ球菌(vancomycin-intermediate Staphylococcus aureus;VISA)の病院表面での生残
Survival of vancomycin-intermediate Staphylococcus aureus on hospital surfaces
M.N. Zarpellon*, A.C. Gales, A.L. Sasaki, G.J. Selhorst, T.C. Menegucci, C.L. Cardoso, L.B. Garcia, M.C.B. Tognim
*Universidade Estadual de Maringá, Brazil
Journal of Hospital Infection (2015) 90, 347-350
背景
医療関連感染症の原因となる病原体の中には、汚染された表面を介した伝播が重要な役割を果たすものがある。これまでの研究では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は室温の乾燥表面上でも生き残ることが判明しているが、バンコマイシン中等度耐性黄色ブドウ球菌(vancomycin-intermediate S. aureus;VISA)に関する公表データは現時点では存在しない。
目的
メチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-susceptible S. aureus;MSSA)、MRSA、VISA を対象として、種々の表面上での生残期間、細胞表面の疎水性、非生物表面への付着、およびバイオフィルム形成を比較すること。
方法
黄色ブドウ球菌株の生残を、ラテックス、綿布、ビニール床材、およびフォーマイカ上で調べた。細胞表面の疎水性は、hydrocarbon interaction affinity 法※により測定した。非生物表面への付着については、花崗岩、ラテックス(手袋)、ガラス、ビニール床材、およびフォーマイカ上で調べた。バイオフィルム形成は 6、12、24、48 時間後に評価した。
結果
ビニール床材およびフォーマイカ上では全サンプルが 40 日間以上生残した。VISA は両方の表面上で 45 日を超えて生残した。すべての菌株に高度の疎水性が認められた。VISA はラテックス、ビニール床材、およびフォーマイカに付着した。バイオフィルム形成は供試した全菌株で 6 から 24 時間以内に増加がみられた。
結論
VISA は高度の生残、付着、および細胞表面疎水性を示した。VISA を保有する患者の治療は臨床医にとって重大な課題であり、種々の器具の表面が多剤耐性菌の重要なリザーバーとなる可能性があることから、これらの表面の清掃と消毒の強化が推奨される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
種々の器具・材料の表面を介した間接接触感染は、制御が容易でないものであるが、それは器具の材質や菌種に左右されるところが大きい。VISA は細胞壁が厚く、バイオフィルム形成能が高い特徴を有するとされるが、本研究では MRSA に比し、ビニール床材やフォーマイカ上での生存期間が長いことが判明した。
監訳者注:
※Hydrocarbon interaction affinity法:Teixeiraら(Epidemiol Infect 1993;110:87)参照。
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