アイルランド共和国の 3 次紹介医療施設における cfr 介在性リネゾリド耐性表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)による初のアウトブレイクの発生、管理、および転帰
Incidence, management and outcomes of the first cfr-mediated linezolid-resistant Staphylococcus epidermidis outbreak in a tertiary referral centre in the Republic of Ireland
C. O’Connor*, J. Powell, C. Finnegan, A. O’Gorman, S. Barrett, K.L. Hopkins, B. Pichon, R. Hill, L. Power, N. Woodford, J.C. Coffey, A. Kearns, N.H. O’Connell, C.P. Dunne
*University Hospital Limerick, Ireland
Journal of Hospital Infection (2015) 90, 316-321
目的
アイルランドにおける cfr 介在性リネゾリド耐性表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)による初のアウトブレイクについて報告すること。
方法
University Hospital Limerick で 2013 年 4 月から 6 月に血液培養 4 件、創部スワブ 1 件、およびスクリーニングスワブ 4 件(患者 9 例)から分離されたリネゾリド耐性表皮ブドウ球菌の特性を、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)、multilocus sequence typing(MLST)、およびブドウ球菌カセット染色体 mec(SCCmec)タイピングを用いて評価した。抗菌薬感受性を British Society for Antimicrobial Chemotherapy のガイドラインに従って明らかにした。リネゾリド処方・使用の禁止、感染予防・制御実践の遵守、環境清掃の強化、保菌患者の隔離、および全病院的な教育プログラムにより、アウトブレイクの制御を行った。
結果
PFGE により、9 株の全分離株が単一クローンであることが示された。分離株は MLST により ST2 に分類されること、また SCCmec タイピングにより SCCmecIII 変異体をコードしていることが示された。9 株の全分離株が cfr 陽性であり、8 株はリネゾリド耐性との関連が強い 23S rRNA の G2576T 変異陽性であった。分離株は複数の抗菌薬(すなわち、リネゾリド、ゲンタマイシン、メチシリン、クリンダマイシン、シプロフロキサシン、フシジン酸、およびリファンピシン)に対する耐性を示した。適用した感染予防介入は有効であり、アウトブレイクは患者が発生した集中治療室に限定された。
結論
本稿は、アイルランド共和国における cfr 介在性リネゾリド耐性表皮ブドウ球菌による初のアウトブレイクの報告である。それにもかかわらず、また既存のアウトブレイク管理プロトコールによって、原因菌および感染源の特定を効率的に行うことができた。しかし、抗菌薬感受性および適切な衛生実践に関する職員の知識がアウトブレイク時には不十分であったこと、ならびに抗菌薬耐性や本稿で報告したようなアウトブレイクの発生を回避するためには教育的介入(およびその再強化)が必要であることが明らかとなった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
黄色ブドウ球菌におけるリネゾリド耐性が報告されているが、本報告はリネゾリド耐性「表皮ブドウ球菌」のアウトブレイクの報告である。患者 9 名中 5 名は血液培養もしくは創部からの検出であり、アウトブレイクに気づかれたものと思われるが、特殊な耐性を示す表皮ブドウ球菌の院内拡散は気づかれないうちに広がり得ることが予想され、他人事ではないと感じられた。
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