的外れなデータの収集:手指衛生監査データの妥当性★
Collecting the data but missing the point: validity of hand hygiene audit data
A. Jeanes*, P.G. Coen, A.P. Wilson, N.S. Drey, D.J. Gould
*University College London Hospitals, UK
Journal of Hospital Infection (2015) 90, 156-162
背景
感染制御実践を確実に行うために、医療施設では 10 年以上にわたって観察による手指衛生遵守のモニタリングを行っている。このようにして得た情報の妥当性はほとんど検証されていない。
目的
遵守状況の直接的観察に基づく手指衛生遵守データの収集・報告について、そのプロセスおよび妥当性を評価すること。
方法
大規模な国民保健サービスの病院トラスト 1 施設で 5 年間にわたって日常的に収集した手指衛生遵守データを調査した。データ収集プロセスを、監査者の調査および面接により精査した。この期間中に実施された他の研究目的で収集した手指衛生遵守データと、施設のデータセットとの比較を行った。
結果
報告された手指衛生遵守率は早期に上昇し、その後の期間中は目標値付近で変化なく推移した。データ収集プロセスの調査から、各病棟・部門におけるデータ収集システムの解釈の変化など、いくつかの変化が認められ、これは研究結果の妥当性を損なうものであった。観察に関する公式な研修を受け、結果をフィードバックしていた監査者は少数であった。
結論
手指衛生遵守状況の観察は現時点のゴールドスタンダードであるが、データ収集の定義および方法が、あいまいさがなく、公表され、注意深い管理を受け、かつ定期的にモニタリングされている場合を除いて、データの妥当性に影響を及ぼすような変化が生じる可能性がある。手指衛生遵守のモニタリングの目的が実践の改善および感染伝播の最小化であるならば、焦点を目標への到達ではなく、徐々に改善が進む実践に向けるほうが、目的が達成される可能性が高くなると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
1,000 床規模の 1 つの病院での取り組みである。報告された手指衛生遵守率データは、研究目的で得られた結果よりも低いものだったという。その背景を探るべく手指衛生モニターの担当者を対象としたアンケートが実施された。モニタリングの訓練や結果のフィードバックの方法、具体的なモニタリングの方法など、いくつかの項目で問題点が明らかになった。本文中に記載されているアンケートの設問は我々が自施設の評価を行う際にとても参考になると思われた。
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