医療従事者の行動の変革に向けて:感染予防・制御実践の評価による不遵守の定性的研究

2015.06.30

Towards changing healthcare workers’ behaviour: a qualitative study exploring non-compliance through appraisals of infection prevention and control practices


N. Shah*, E. Castro-Sánchez, E. Charani, L.N. Drumright, A.H. Holmes
*Imperial College London, UK
Journal of Hospital Infection (2015) 90, 126-134
背景
感染予防・制御実践における行動改善は依然として困難な課題であり、医療従事者の行動の決定因子を解明することは、効果的かつ持続的な行動変革のための介入を策定するうえで必須である。
目的
感染予防・制御に関する職務や社会・環境状況の評価が、どのように不遵守行動をもたらし、また不遵守行動に影響するかに注目して、感染予防・制御実践の不遵守を促進する医療従事者の行動を特定すること。本研究の目的は、(1)医療従事者が自分の行動や他人の行動をいかに正当化しているかを明らかにすること、(2)感染予防・制御の遵守において課題が存在する領域を明らかにすること、および(3)感染予防・制御実践のばらつきの説明になると考えられる労働環境の状況について記述することである。
方法
英国・ロンドンの国民保健サービス(NHS)病院グループの臨床職員を対象として、2010 年 12 月から 2011 年 7 月に定性的手法による面接を行った。主題構造を用いて回答を分析した。
結果
医療従事者が自分の行動を評価する際の 3 つの方法が、感染予防・制御の方針および実践に関する回答によって特定された。(1)責任の転嫁(特定の感染予防・制御実践に関する責任のあいまいさを伴う)、(2)優先順位の決定およびリスク評価(一部の感染予防・制御の方針・実践に対する価値観が異なることが示された)、および(3)職場の階層の影響(これにより、従来の臨床的役割が業務上の関係性に困難をもたらしていることが明らかになった)。
結論
全体として、行動は、方針に示された規則から完全に独立したものではなかったが、施設での標準的実践、個人の好み、および職種毎の独立性の程度が混在していることが多かった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
感染予防・制御実践として、「何を」行えばよいのかについて、数多くのエビデンスやガイドラインが示されてきた。しかし、それを実際に行動に移すことがいかに困難であるかもよく知られている。これからの時代は、より「行動変容」にスポットライトが当てられていくだろう。本論文は医療従事者が手指衛生などの感染防止策を遵守しない理由として、各部署でアレンジされた標準的な手法や個人の好み、職種の違いなどを挙げている。イギリスでの研究だが、およそこれらは日本でも当てはまる。これからの問題は、こういった理由を踏まえて「どうすれば改善するか」である。

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