クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の院内管理:文献レビュー★★
Hospital management of Clostridium difficile infection: a review of the literature
N. Khanafer*, N. Voirin, F. Barbut, E. Kuijper, P. Vanhems
*University of Lyon, France
Journal of Hospital Infection (2015) 90, 91-101
背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)流行株である 027 型の登場が、感染制御実践の分野で再び関心を集めている。
目的
非アウトブレイク時の院内 C. difficile 感染症(CDI)の減少を図るための様々な実践の有効性をレビューすること。
方法
英語とフランス語による MEDLINE の検索を行い、データソースを特定した。ORION 声明※を用いて、CDI 管理のための介入について報告している文献から主要データを抽出した。
結果
1982 年から 2013 年 12 月に発表された 21 報の研究をレビューした。ほとんどの研究は前後比較介入であり、少数の研究は事前に計画された公的な前向き研究であった。以下の介入の単独または併用での実施後の効果について、報告が行われていた。抗菌薬管理、環境消毒・清掃、手指衛生、清拭、サーベイランス、コホーティング、および感染患者の個室への隔離。
結論
多くの方法論的な欠点や若干の不適切な研究報告が認められ、観察された CDI の減少が完全に介入に起因すると見なすことはできないと考えられる。教育や手洗い・手袋装着プロトコールを含む感染制御プログラムは CDI 発生率の低下に寄与したことが示されたが、これらの手法の多くは、個々の因子の相対的な効果を評価することができない多面的介入の一部の要素であった。適切な環境消毒および抗菌薬管理によって、最も効果的な有益性が得られると考えられた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
CDI は、北米および欧州において強毒株 BI/NAP1/027 の流行と便移植という画期的な治療法とが相まって、基礎的研究から感染対策を含む臨床研究にいたるまで幅広く研究が行われている。本論文は、CDI の感染制御策に関する論文をレビューしており、CDI の感染対策に関する研究の問題点を知るうえで一読の価値がある。疾患定義や抗菌薬適正使用の国ごと、地域ごとの多様性、感染対策の多面的アプローチ(手洗い、環境整備、接触予防策、教育訓練、職員の行動など)は多数の交絡因子の関与を排除できず、十分なエビデンスを作るところまで至っていない。多くの研究が介入の前後での比較であることも一因である。今後は ORION 宣言に基づいた研究デザインの標準化が必要となる。
監訳者注:
※ORION 声明(Outbreak Reports and Intervention Studies of Nosocomial Infection statement):病院疫学に関する研究および論文の標準化を図り、エビデンスの統合と報告の透明性を推進することを目的として発表された提言(J Antimicrob Chemother 2007;59:833)。
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