血液透析患者集団におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)およびメチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-sensitive Staphylococcus aureus;MSSA)のスクリーニング:保菌、人口統計学的特性、および転帰
Meticillin-resistant Staphylococcus aureus and meticillin-susceptible Staphylococcus aureus screening in a cohort of haemodialysis patients: carriage, demographics and outcomes
A. Price*, N. Sarween, I. Gupta, J. Baharani
*Heart of England Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2015) 90, 22-27
背景
血液透析患者は、病院との高頻度の接触、留置器材、および免疫障害のために黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を容易に保菌する。また、保菌は感染リスク上昇と関連する。
目的
当院の血液透析患者集団におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant S. aureus;MRSA)およびメチシリン感性黄色ブドウ球菌(meticillin-sensitive S. aureus;MSSA)の保菌率を明らかにすること、および保菌、再保菌、または除菌プログラム後の持続的保菌のリスク因子を特定すること。
方法
2009 年 6 月から 2011 年 5 月に黄色ブドウ球菌保菌のスクリーニングを受けた全血液透析患者を対象として、電子カルテを用いて 18 か月間の後向き追跡調査を行った。IBM SPSS version 19 を用いて統計解析を実施した。
結果
スクリーニングを受けた患者 578 例のうち、1 回以上スワブ陽性であったのは 288 例(49%)であった(MRSA 10%、MSSA 90%)。これらの患者のうち 265 例が除菌療法のコースを完了し、根絶に成功したのは 36%(根絶例)、不成功であったのは 64%(非根絶例)であった。患者の人口統計学的特性、血管アクセスの種類、18 か月死亡率、または入院件数は、2 群間に統計学的有意差はみられなかった。根絶が不成功であった患者は、除菌が成功した患者と比較して研究期間中の黄色ブドウ球菌菌血症の発生率が高かった(P = 0.003)。
結論
当院の血液透析患者集団の半数は、18 か月間のいずれかの時点で黄色ブドウ球菌を保菌していた。除菌後に 3 分の 1 の患者では、18 か月間の持続的根絶に成功した。非根絶例では菌血症のリスクが上昇しており、不良な死亡率と関連している。日常的なスクリーニングを実施し、積極的に除菌を行うことが推奨される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
黄色ブドウ球菌の保菌者が長期的な予後において黄色ブドウ球菌による感染症を引き起こす可能性があることは、以前より指摘されている。一方で、除菌療法による選択圧で耐性菌が増える可能性や、除菌の永続性に問題がある。
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