医療施設におけるノロウイルスの負荷およびアウトブレイク制御戦略★★
Burden of norovirus in healthcare facilities and strategies for outbreak control
A. Kambhampati, M. Koopmans, B.A. Lopman
*Centers for Disease Control and Prevention, GA, USA
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 296-301
ノロウイルスは、あらゆる年齢層における市中感染型急性胃腸炎の原因として、極めて高頻度にみられる。また、医療環境でのアウトブレイクの原因としても極めて頻度が高いものの 1 つであり、長期療養施設と急性期病院の両方で影響を及ぼしている。ノロウイルス胃腸炎は通常は軽症であり、治療を行わずに回復するが、医療関連感染ではしばしば抵抗力の落ちた集団に影響を及ぼし、重度の感染症や医療サービスの混乱をもたらす。世界的に、病院および住居型介護施設におけるノロウイルスアウトブレイクの大半は、genogroup II 型タイプ 4(GII.4)株が関連する。最近のデータからは、医療施設でのアウトブレイク期間中に死亡率が上昇することが示されている。院内アウトブレイクは、甚大な経済的および社会的損失をもたらし得る。現行のノロウイルス制御策は、主として一般的な感染制御の原則に基づいており、治療は対症療法的かつ非特異的である。現時点では利用可能なワクチンおよび抗ウイルス薬はないが、いずれも開発途上であり、有望な結果が得られている。
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監訳者コメント:
ノロウイルスは、先進国での医療施設内(急性期および長期療養施設)で発生する急性胃腸炎の頻度の高い原因病原体である。しかしながら、診断法が限られるため、実際の発生率よりも低く報告されていることがわかっている。動物実験ではリバビリンやファビピラビルなどの抗ウイルス薬の効果が確認されているが、ヒトでのデータはない。また、現時点で細胞培養ができないという重大な足かせがあるが、ワクチン開発が行われ、ウイルス様粒子を利用した単価経鼻ワクチン接種により発生率を半減できたとの報告がある。さらに GI.1 と GII.4 の二価の注射用ワクチンが第 II 相試験を終え、有効性が確認されている。ワクチン効果の持続期間が短く、さらなるワクチン開発が期待される。本論文はウイルスの最新の事情を知るうえで有用である。
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