環境からのクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の根絶方法★★

2015.04.29

How to eradicate Clostridium difficile from the environment


F. Barbut*
*University Pierre et Marie Curie, France
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 287-295
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)はこの 10 年で、医療関連の下痢および死亡の主要な原因となった。芽胞形成細菌の伝播は、医療従事者の手指や汚染環境を介して生じると考えられる。したがって、C. difficile 感染患者が入院している病室の環境清掃・消毒の強化が必要である。様々な学術団体がガイドラインを発表している。ガイドラインは、次亜塩素酸塩(10 分の 1 に希釈)または殺芽胞剤を用いて C. difficile 感染患者の病室の環境汚染除去を行うことを推奨している。清掃・消毒の遵守は極めて重要なポイントであり、不適切であることが多い。最近、室内消毒の新たな「非接触」法が導入されている。紫外線または過酸化水素を使用するシステムが最も広く用いられている。In vitro 研究から、担体に接種した C. difficile の芽胞の減少は、蒸気化過酸化水素法(30%過酸化水素による)では 6 log10 超、エアロゾル化過酸化水素システム(5% ~ 6%の過酸化水素)では約 4 log10 に到達するのに対して、紫外線による方法では約 2 log10 であることが示されている。C. difficile 伝播に対するこれらの装置の効果を評価した研究はほとんどない。これらの装置の主な欠点は、その病室から患者および職員が退室しなければならないため、装置の使用が患者の退院後に限られることなどである。この室内消毒のための新しい非接触法は、日常的な清掃を補完するものではあるが、代替法とはならないと考えられる。
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監訳者コメント
クロストリジウム・ディフィシル(CD)の施設内伝播に、CD による環境汚染が少なからず関与していることが示唆されている。芽胞形成菌であるため環境に長期間生存することや、強毒株 BI-NAP1 による欧米での流行は、感染予防対策における「環境整備」の重要性を強調することとなった。これまでのいくつかの報告では、次亜塩素酸ナトリウムなどの殺芽胞性消毒剤を使用した用手法の環境清拭では十分に CD を除去できないとされ、「非接触」型の紫外線や過酸化水素水による病室全体を殺菌する方法が注目されている。しかしながら、その評価は十分に確立されたわけではない。

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