南アフリカの公立医療機関の外来診療所における空中浮遊結核菌(Mycobacterium tuberculosis)曝露を検出するためのパイロット研究★
Pilot study to detect airborne Mycobacterium tuberculosis exposure in a South African public healthcare facility outpatient clinic
O. Matuka*, T.S. Singh, E. Bryce, A. Yassi, O. Kgasha, M. Zungu, K. Kyaw, M. Malotle, K. Renton, L. O’Hara
*National Institute for Occupational Health, South Africa
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 192-196
背景
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の空気感染は依然として労働衛生上の危険であり、人が多く医療資源が乏しい医療環境では特に問題となっている。
目的
南アフリカ・ハウテン州(Gauteng)の多忙な外来診療所で、空中浮遊結核菌の定量的測定を行うこと。
方法
総合診療部門および管理事務室の静止空気サンプルおよび医療従事者からのサンプルを採取した。定量的リアルタイム PCR 法を用いて空中浮遊結核菌を検出した。現場視察の結果および医療従事者の業務実践についての記録も行った。
結果
全体で、結核菌は 49 サンプル中 11 サンプル(22.4%)で検出され、内訳は医療従事者から 25 サンプル中 9 サンプル(36%)、静止空気 24 サンプル中 2 サンプル(8.3%)であった。医師 10 名中 5 名(50%)、看護師 13 名中 3 名(23%)のサンプルが陽性であった。別の日に実施した再検査の結果にはばらつきがみられた。陽性結果を示した医療従事者の大半(87.5%)は咳のある患者と接触しており、いずれも研修を実施したにもかかわらずマスクを装着していなかった。
結論
定量的リアルタイム PCR 法とエアサンプリングの併用は、結核菌への曝露リスク評価のための簡便かつ有効なツールである。本知見は、結核の感染予防・制御対策を強化する病院の取り組みを推進するものである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
南アフリカは結核の高蔓延国であり、10 万人当たりの罹患率は 2013 年でおよそ 850 人と推定され、耐性結核のリスクも高い(WHO、2014)。外来での結核患者の診療機会も、医療従事者への曝露事例も、また医療従事者自身がすでに結核罹患患者であることも多いわけであるが、そのような環境の中、本研究のように診療環境や医療従事者の呼気中から結核菌がしばしば検出されたことは、空気感染のリスクに関する具体的な定量的評価の 1 つといえ、非常に興味深い。結核が普遍的に存在する環境での、マスク装着による防護効果を評価したデータとしても価値あるものといえる。
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