イランにおける救急部門の患者のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)株の分子解析および感受性パターンと、関連するリスク因子
Molecular analysis and susceptibility pattern of meticillin-resistant Staphylococcus aureus strains in emergency department patients and related risk factors in Iran
M. Rezaei*, R. Moniri, S.G.A. Mousavi
*Kashan University of Medical Sciences, Iran
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 186-191
背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は、病院内および市中の両方で拡大がみられる。MRSA の鼻腔内保菌が MRSA 感染のリスク因子であることが明らかにされている。
目的
MRSA 保菌のリスク因子および抗菌薬感受性パターンを評価し、救急部門の成人患者における MRSA の鼻腔内保菌率を明らかにすること。
方法
イラン・カーシャーン(Kashan)の病院の救急部門の患者 810 例を対象として、横断研究を実施した。MRSA 保菌のリスク因子に関する質問票に各患者が記入した。前鼻腔からサンプルを採取した。Multiplex PCR 法を用いた SCCmec タイピング、および PCR 法を用いた Panton-Valentine ロイコシジン(PVL)遺伝子検出を行った。アミカシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、ペニシリン、トリメトプリム・スルファメトキサゾール、エリスロマイシン、テトラサイクリン、バンコマイシン、および cefoxitin に対する MRSA の感受性をディスク拡散法で判定した。
結果
黄色ブドウ球菌および MRSA の鼻腔内保菌者は、患者 810 例中 296 例(36.5%)および 26 例(3.2%)であった。そのうち、9 株(34.6%)、7 株(26.9%)、2 株(7.7%)、2 株(7.7%)、2 株(7.7%)、1 株(3.8%)、および 1 株(3.8%)の MRSA 分離株が、それぞれ V 型、III 型、I 型、IVb 型、IVh 型、II 型、および IVa 型に分類され、7 株(26.9%)は分類不能であった。PVL 遺伝子は検出されなかった。すべての MRSA 分離株が多剤耐性であった。
結論
入院歴、尿道および/または静脈カテーテルの使用と、MRSA 保菌との間に有意な関連が認められた。MRSA 鼻腔内保菌の疫学およびリスク因子に関するさらなる研究が、MRSA 感染の治療および予防の指針として有用となると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
一般的に世界各国からの報告によれば、健常人での黄色ブドウ球菌の保菌率は 17% ~ 36%、MRSA の保菌率は 0.7% ~ 3.9%と、国あるいは母集団の違いにより異なる。本論文でのイランの保菌率は、黄色ブドウ球菌および MRSA ともに高く、MRSA 保菌者の半数が CA-MRSA で、ST 合剤やゲンタマイシンの耐性があるなどの特徴がある。日本でも入院患者の MRSA は SCCmec 型は Ⅱ 型から Ⅳ 型、すなわち HA-MRSA から CA-MRSA へと変化していることを考慮すると、今後、外来患者での黄色ブドウ球菌感染症では、CA-MRSA による感染症も考慮する必要がある。
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